ミラーリング #8(影の国編:前編)影の国
フェルディアと名乗った男は笑みを浮かべたまま、「来いよ」とあごをしゃくった。そしてそのまま、さっさと歩き出してしまう。
クー・フーリンは迷った。周りでは、彼女を囲んでいた若者たちも武器を引き上げ、男の後について歩き始める。
何人かが、素直についてこない彼女をとがめるような目で見た。どうやら、あのフェルディアという男は、こいつらのリーダー格らしい。
クー・フーリンは覚悟を決め、黙って男を追いかけた。
ついてくるのが当然とでもいうように、男は振り返らない。
岩肌を下っていくと、先ほどクー・フーリンが見下ろした天幕の集落に出た。
「フェルディア!」
火を囲んでいた若者たち──少年と呼んでもいい年齢だ──が駆け寄ってくる。
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