「 ……なんだ、まだ練習してんのか」
作業を終えて部屋に戻ると、すでに耳に馴染んだ女の声がして。
中でブラッシュアップに励んでいるらしいメンタリストに声をかけた。
この男の声帯模写は特殊で。
完全に役になりきっている時は、外見まで変わってしまう。
蝙蝠というより変幻自在の化け狐だ。
……どちらかと言えば、完璧に作り上げられたイメージに引き込まれて、脳がそのイメージを視覚に投影している、と言うのが近いのだろうが。
そんなことを思いながら部屋に入ると、珍しくゲンが固まっていて。
こちらの気配に気づいて、怖々というふうに振り返った。
「 千空ちゃん!!!どうしよ!!!???」
「 あ"ぁ?」
女の声のまま、いつになく切羽詰まった様子で訴えられて、怪訝に思って問い返す。
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