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    ShibabaUsa

    @ShibabaUsa

    イドアズと独普に狂う一般人外外道

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    ShibabaUsa

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    ねんどろの独普予定だったもの

     兄さん、遂に会えるんだな。

     燦燦と陽光が降り注いだ日のこと。アスファルトとソーラーパネルの多重反射により威力の強まった光線が室内へ紫外線カットフィルムを通して緩やかに満たすドイツ邸にそれはあった。
     10センチ程の丸みを帯びた三頭身のボディと大きな蒼い瞳は愛嬌を豊かに備え、乱れもない正装に光沢のある黄金を想わせるオールバックと引き結んだ口は凛々しさを体現したかのよう。常ならば身を置いている二階建ての屋敷から飛び出して、持ち主──の弟の手元で共にデスクトップを覗いていた。
     そう、一般に『ねんどろいど』と呼ばれる人形が彼だ。
     今にも身を乗り出さんとする彼を支える手の持ち主はその人形に瓜二つで、人形とは違って丸みのない輪郭と切れ長の瞳は理知的でポロシャツから延びる腕は隆々と膨らみよく鍛えられていることがわかる。
     ルートヴィッヒ──ドイツ連邦共和国の体現たるその人が己を模した人形と暮らすことになったのは、日本からのプレゼントが事の始まりだった。
     
     
     ある世界会議のときだった。いつものように会議は躍る然れど進まずといった有り様で、議題の収束など兆しも見えない。このまま何も決まらずに流れるのかと憂鬱になる昼休みは本田とフェリシアーノ、馴染みのある者同士で過ごしていた。会場のホテルから徒歩数分のところにあるカフェにてランチをしながら他愛のないおしゃべりに興じる。日々忙殺される心もこの2人や、そして何より兄と過ごす時間が穏やかにしてくれるから自分はどうにかなっているのかもしれない。ドイツは混沌とした議場からかけ離れた平穏を噛み締めていた。
     そんな折のことだった。
    「私の家で若い子たちに流行っている『ねんどろいど』が、近いうちに国の方々をモデルにして売り出すようです。おそらく、皆さんの上司へ依頼交渉が行くでしょうけど、お二人はどうしますか?」
     ひと足早く箸を置き、自分から話題を提供することがあまりない本田が切り出したのは。
    「菊、ねんどろいどってなに〜?」
     ソースをつけずに口へ運ぶのは流石と言ったところか。トマトベースのミートソースに糸唐辛子をのせたスパゲティをくるりとフォークに巻きつかせるのは本場イタリアの具現、フェリシアーノ。ちゃんと飲み込んでから話しかけるのはマナーがなっているといえる。
    「このようなフィギュアなのですが……」
     取り出したタブレットを叩き、ブラウザを立ち上げる。開いたのはあるメーカーの通販サイトであった。掲載されていたのは日本どころではなくこちらでも有名な歌姫やアニメ、マンガのキャラクターをデフォルメ化した人形だった。
    「本田の部屋にもこのキャラクターが並んでいたな」
    「そう!まさしくそれがねんどろいどです!!」
     はあ〜〜早く我が家で待っている嫁たち会いたい……。
     奇声をあげて机に撃沈する本田。お前を待っているのは嫁ではなく無機質な人形たちだろうに……。
     呆れる俺に何故かむっとした顔を上げる本田。
    「ルートヴィッヒさんはいいですよね。家に帰ればハグもキスもしてくれる嫁がいて」
    「な!?」
    「あ〜、確かに家事もしてくれて〜、犬の散歩もしてくれる、あとすっっっごい愛してくれる子がいるね」
    「断じて、嫁ではない!!!!」
    「そうですね、お兄様ですし」
    「昨日もギルベルトとえっちしてきたんでしょ?背中少し滲んでるからちゃんと手当てした方がいいよ〜」
     外見はともかくとして中身は俺の何倍も生きている友人がくるんも顔もだらしなく弛めて笑われてしまえば何だか馬鹿馬鹿しくなってしまう。それに、フェリシアーノにバレているということは……。
    「あー、その、いつから気づいたんだ?」
    「ルートの隣りに座ったとき。後ろに座ってたフランシス兄ちゃんとアントーニョ兄ちゃんも笑ってたからみんなに広まってると思うよ」
     なんてことだ。
     今回のホスト国はベルギーで近所ということ、そして2日に及ぶスケジュールのために予測される兄さん不足を懸念して、昨夜はいつもよりも激しくなったのは認めよう。しかし、それのどこが悪いというのだ?愛する人と会えない分を求めてしまうのはしかたがないことだろう少々、がっつきすぎてしまって、兄さんはベッドから出ることも叶わなかったけども!!
    「その辺のお話は大変気になりますが、2人ともこちらの写真を見ていただけませんか?」
     そう言ってタブレットに写し出されたのは先程見た商品ページの人形……が、様々な形の衣服を身にまとい笑っているところを収めたものだった。
    「菊ー、これって全部菊の手作り?」
    「ええ、動画のイメージから型紙を作って仕事の合間を縫って作った渾身の一作です」
    「こんなに細かな細工、型紙を作ったとしても縫製が大変だろう。一体何時間かかったんだ」
     指を一つ一つ折っていき、もう片方にも及んでそれも折り終わったら今度は指を開き始めた。一体何時間かかったというんだ本田! 幾度も指を折っては開いて、折っては開いてを繰り返した後、疲れた顔をあげてこう答えた。
    「ざっと一カ月半、てところですかね」
     一カ月半。
     およそ三〇日を一カ月として四五日。
    「いえ、二四時間ずっと活動しているわけではないので実際に何時間かと言われると、ちょっとよくわかりませんね」
    「ヴェ でも菊、お仕事あるときもずっと作ってたんでしょ? 働きすぎで死んじゃうよ~~」
    「ご心配には及びません。仕事終わりは布を切ったりただ縫い付けるだけの作業を済ませて、休みの日には撮り溜めていたアニメを視聴し、CMの合間に装飾の飾り縫いとペインティングをしていますので!」
    「それ休んでるって言えない~~!」
     ヴェ~と泣き出すフェリシアーノにあたふたする本田。いつもの光景ではあるが、このままでは埒が明かない。しかし、これだけは言わせてもらう。
    「本田、趣味に没頭するのを止めろとは言わないが、じっくりと休む日は設けた方がいいぞ。」
    「ですから大丈夫ですって。しばらく服の製作はお休みしています。寧ろ休みの日に何もしないというのは怠惰なようで落ち着かないです。ですので、こうして何かに費やすのは決して休んでいないわけではないのですよ」
    「……そうか、それならばいいのだが」
    「ルートヴィッヒさんも自分でぬいぐるみのお洋服を作ったりしていますよね。こういうお洋服を作ったりするの興味ありません?」
    「いや、俺は」
    「手先が器用なルートヴィッヒさんならきっと好きですって!」
    「だから」
    「しかもこれ、おそらくギルベルト君にもモデル依頼が届きますよ」
    「……何だと?」
     それは初耳だ。
    「なぜ、兄に依頼が届くんだ? 今回の依頼は国家であるものたちへのイメージグッズなのだろう? 知っての通り兄は現在国家としての役割は持っていないし、そのようなグッズを作るメリットもないと思うのだが」
     一体どんな経緯があれば、兄さんにモデル依頼など来るというのだ。隠居して久しい兄の姿を知っている者など東時代の一部国民くらいだ。日本で姿を知る手段など当時も無かったはずなんだがな。
    「ギルベルト君が知られるきっかけはあなたですよ、ルートヴィッヒさん」
    「あ~、なるほどね~」
     いつの間にか泣き止んだフェリシアーノが本田に同調しだした。さっきまで泣いていたとは到底思えない。切り替えが早すぎる。
    「ギルベルトって、ルートが帰ってくるとき空港の最前列でいつも写りこんでるじゃん? 上司とかカメラが映してる後ろでぶんぶん腕を振ってるところとか目立つよね~」
    「そうですね。SNSでもドイツさんに抱きついている人間で話題になって、そこで元東の国民さんが『あれはプロイセンさんで、ドイツさんのお兄さんだ』と発信したのが大いにバズリまして。あの見た目ですから、メーカーさんもグッズ化したいと思ってますね」
    「……あの、兄貴っ」
     遠方への大きな国際会議は往々にして一、二週間以上はかかることが多い。その間は兄さん不足も深刻で、毎晩通話しなければ不安で不安で仕方がない。それを議場に持ち込むことは決してないが。それでもご飯はちゃんと食べているか、外で怪我していないだろうか、変な虫をどこぞで付けてきていないか。兄さんは強くて美しいが、何よりもかわいい。そこに目を付けた不埒な者に手を出されていないか、心配である。勿論、手を出した方をだが。まあ、手を出した時点でそいつが一〇〇%悪い。そんな不安の日々から解放される瞬間に兄さんを目にしたら、もう!
    「でもプロイセン君の人形ができたら自分の着せたいお洋服とか着せられますよ?」
    「元々着てほしい服があったら言ってはいるし着てもらっている!!」
    「本当にですか? ベビードールや逆バニー、マイクロ水着など裸のボディを買ってしまえば普段はあまりお願いできない格好もさせられますよ」
    「……っ!?」
     ごくりと喉が鳴った。特別なことでもない限り兄さんに着てもらえないものも着てもらえる、だと!?
    「そんな遊び方が、許されるのか?」
    「もちろん。実物があるのとないのではある方が、出張先でも妄想できますよね?」
     いろんな意味で愛想のいい笑みを浮かべる本田。その笑顔の裏に何重もの思惑を巡らせる彼にはほとほと敵わないとすら思う。
    「まあ、いずれにしてもお受けになるのであればこちらから配送してもらうので、楽しみにしててください」
     そう締められて立ち上がる本田。時刻を見ればまもなく午後の会議が始まろうとしている。慌ててルートヴィッヒもカバンを持って立ち上がり、会計に行こうとしたところではたと気づいた。
    「フェリシアーノ! こんなところでシエスタをするんじゃない!!」
     
    「ところでフェリシアーノ、俺はどんな顔をして午後をやり過ごせばいいんだ?」
    「……笑えばいいと思うよ」
     定刻前に議場に着いた瞬間、先程の忠告を思い出してしまい羞恥に襲われるドイツ。それをイタリアはヘラりとも、にっかりともつかない笑顔で見ているのだった。
     
     
     結局あの会議後にはフランシスやアントーニョの酒の肴にされ、アーサーにはお盛んだと笑われる。それもこれも兄が爪を立てた所為だと割り切り最終日を乗り切り、家に帰った後はただいまのキスもなおざりにそのまま仕返しに励むこととなった。
     その後、やはり上司からホビーのモデル依頼の打診があった。そしてどこから聞きつけたのかギルベルトもルートヴィッヒ宛の依頼を知っており、「絶対手に入れてやるぜ!」と意気込まれてしまった。大好きな兄にそこまで言われてしまってはしょうがない。ルートヴィッヒはその仕事を引き受けたのだった。
     それから数ヶ月後。ドイツのねんどろいどの商品情報が公開された。時は同じくして、ドイツ邸へ一通の小包みが届けられた。平日の昼間であったこともあり、受け取ったのはギルベルトであった。伝票の送り主を一瞥し、旧知の相手からだと把握すると早速包みを開けていく。すると、中にもまた箱があり、その上にはカードが一枚。
     
     先日のお仕事の先方が協力のお礼として先行してお届けしたいとの事でした。お家にでも飾って、ギルベルト君と一緒に楽しんでください。
     
     なるほど。
     直近で日本と関係のある仕事ならば会議を除いてあのことであるとわかる。およその箱の中身を推測してカッターを滑らしていく。
     中にいたのは『ドイツのねんどろいど』だった。
     やっぱりなと思うと同時に違和感が生じる。
    「こいつって、こんなにパーツ少なかったか?」
     実の所、ギルベルトはねんどろいどを手にしたことがなかった。月々のお小遣いを捻出してまで購入を決めたのは偏に最愛の弟フィギュアを手元に置いておきたいからだった。
     出張や会議で遠方へ赴く間、ギルベルトは深刻な弟不足に苛まれていた。その際には毎晩おやすみを伝え合うけれども、それでは足りない。一日二日程度ならまだ我慢はできる。しかし一週間を超えてくると話は違ってくる。日頃感じる弟の匂い、体温、存在そのものがギルベルトの日常から剥離していく感覚。目を瞑れば、彼の姿をそこに映し出すことができるのに、視覚以外の感覚がそれを否定する。
     それはギルベルトの心身を蝕んでいく。
     寂しい会いたい声を聞きたい抱きしめたい抱きしめられたい吸いたい苦しい溢れ出そうだ感じたい一目見たい
     ……愛されたい。
     とにかく、独りの時間というものは思いの外堪えるのだ。それに気づいたのは統一後、弟と同居或いは婚姻した辺りのときだ。
    (ホント、俺も弱くなってしまったな)
     喧嘩に明け暮れていた頃、戦力多数と少数であれば自分は当然少数側だった。だからといって決して弱かったわけではない。寧ろ足手まといがいるくらいなら孤軍奮闘あるのみと戦場で剣を振るった。いつしか周囲から人々が避けるようになって、それを彼は憂えることはなく、寧ろそれを誇り、孤高であると高らかに嘲笑った。欧州一の嫌われ者。誰もが彼を指差し批難を浴びせ罵詈雑言の槍玉に挙げるが、それで傷つく心など生憎持ち合わせていなかった。
     その彼に契機が訪れたとすれば、帝国の子――ドイツを育てていた時代に他ならないだろう。かつて、神聖ローマ帝国と呼ばれた子の生まれ変わりかに見違えるが、彼はこんなに澄んだ色ではなかった。深く、暗い、そして絶対の約束を抱えつつも目の前の壁を睨みつける藍の双眸が鮮やかではなくともプロイセンは好感を持っていた。
     その子ども、神聖ローマ帝国が名も体も地球上から消えた頃に生まれたのがドイツだった。祝福を受けた麦畑の金糸、そして無限の可能性を秘めた蒼穹の瞳を持つ子どもが生まれ、それはバラバラに別れた血族を纏めあげんと使命を背負いながらその生誕を祝福された。なんやかんやでドイツの親権を手にしたプロイセン。しかしその胸中は穏やかではなかった。
     ――今からこいつを庇護下に置いておけば、面倒な諸方の連中を支配下に置けるんじゃね? じゃあ親権取ってこいつを調教すればいいんじゃね? 俺様マジ天才じゃん。
     優しさの欠片もなかった。
     
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    ShibabaUsa

    PROGRESS書きたいところを書き殴るだけの人狼独(小)×悪魔普
    独普以外の何物でもない。
     夜の帳が明け、雄鶏が目覚めの一声をあたりいっぱいに響かせる。眠っていた良い子も、遊び呆けていた悪い子も、その声だけは無視できない。雄鶏が鳴かなくたって、朝になれば夜闇に潜む魔物の恐怖から放たれた小鳥たちがその危険が過ぎ去ったよ、と住民たちに教えて周る。彼ら、もとい彼女らの思考は実に単純で、直結した脳みそと嘴を動かして、各々の囀りを以って彼らの時間を告げるのだ。

     朝が来た。
     その一日は、決まって鳥の鳴き声から始まる。

     だからといって、夜の眷属たちが全くの活動を行わないかと問われれば、答えは否だ。基本的には、彼らの肉体がベストパフォーマンスを取るのに最適な時間帯が夜を基点に回っているという話で、人間に紛れるような習性を持つものは昼間も活動しているという例が挙げられている。人間に当てはめるならそう、夜型と朝方の意味合いが逆転していると捉えてもらうと、非常に分かりやすい。夜に活動するよりも昼の方が性に合っているなど、種全体として最適化されているプログラムが一定個人については違和を生じさせてしまう問題は、どの種族を挙げてもらっても例の一つは存在している。
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    ShibabaUsa

    PROGRESSあの独普前提バイ普の続き的な蛇足話
     ヨーロッパのおよそ中央に位置するドイツ連邦共和国、その南部にて一大産業圏を形成しているバイエルン州では穏やかな朝を迎えようとしていた。ミュンヘン郊外に広がる住宅地、その隙間では小鳥の家族がちろちろと跳ね回りながら愛らしくも歌を奏でた。路地で、枝の上で、庭で、窓辺で。朝の訪れを喜ぶように囀る彼らに釣られて、住民たちも次第に目を覚ます。薄く開いた目にはきっと、暖かな白の光が差しこむことだろう。それにむずがるのか、または覚醒するかどうかは人によるのだろう。夜が明けたばかりの時間というのは、時刻表期の上ではだいぶ早い。二度寝に耽る者だっているはずだ。
     しかしこの家の住人だけは違った。鳥たちの囀りには一切耳を貸さず、それどころか枕で耳を塞いでしまった。頭の後ろに枕を押さえつけながら、むにゃむにゃとまるで意味を成していない言葉を漏らし、そして静かな寝息を立てる。この住人、いつもであれば仏頂面であったり不機嫌そうな顔ばかりを浮かべているのだが、さすがに寝ているときばかりは表情も穏やかになるようだ。表情の険しさは鳴りを潜め、代わりにその寝顔は非常に安らかであった。
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