選ばれた二人<1>
互いの心の声が聞こえるようになって、一週間が経つ。
赤井とふたりで実験を繰り返し、わかってきたこと。それは、相手に伝えたいと思ったときにだけ、自分の心の声が相手に届くということだ。
赤井はただおもしろそうに笑っていたが、降谷はまったくもって笑えなかった。降谷には、赤井に絶対知られてはならない感情があったからだ。
赤井に伝えたいと思ってしまったが最後、自分の秘かな想いは赤井に届いてしまう。降谷は慎重に自分の心を操らなければならなくなっていた。
しかし、不可思議なこの現象は、降谷にとって悪いことばかりではなかった。たとえば、自分たち以外の人間に話を聞かれたくない場合、意外にも重宝できたりする。
12910