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    おいなりさん

    カスミさん……☺️

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    おいなりさん

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    明日寒そう_(:3 」∠)_

    ##真スミ

    待ち合わせ

    ビルの隙間に見える空は確かに青く澄んでいるのに、吹き抜ける風のせいで余りその恩恵を感じられない。
    寒い、と恨み言を口にしても何か変わる訳でなく、目の前を通り過ぎて行く人たちと同じように上着の前を片手できゅっと閉じて寒さを凌ぐ事にした。
    とは言え、それも僅かな時間の事。
    コツリ、左後ろから聞こえた、雑踏の中に紛れたその音に真珠は勢い良く振り向いた。
    いつもは驚かされる側なのに、この時ばかりは相手の方がギョッとして立ち止まってしまった。
    吹き抜ける風に、黒の茂みの奥にある灰緑が一瞬だけ陽の光に煌めくのが見えた。
    真珠の腰が宙に浮き、さっきまで胸の辺りを掴んでいた手は風を撫でる。
    踏み出した足の先には待ち焦がれたその人の姿が景色の中にくっきりと浮かび、寒さに強張っていた表情はすっかり春の陽気を帯びていた。
    薄紅色の唇が奏でる愛しい音。

    「カスミ!」
    「真珠。待たせちゃったみたいッスね、すんませ〜ん」
    「ううん、大丈夫!おれも今来た所だから!」

    眩しく照りつける太陽のような笑みに、カスミの目は細い三日月を描く。
    太陽と月が同じ空に見えることは、そう稀な事でないようだ。


    end.
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