【忠暦】ハロウィンの話 約束の時間を五分ほど過ぎた頃に部屋のインターホンが鳴らされた。応える前から二人分の少女の声がドアポストから滑り込んできて、曇りなく私の名前を呼ぶ。
「ただしー!」
「おかしちょーだーい!」
靴を履き、玄関の棚に置いていた二つの小包を背中に隠しながらドアを開ける。まず一人目の少女が見えて、瓜二つのもう一人も前のめりに顔を出してきた。揃いのマントととんがり帽子はおそらく手製のもので、二人の体格に合わせて小振りにまとまっている。それぞれの腕にはカボチャの形をしたカゴが抱えられていた。
「七日、千日。忠に何て言うんだっけ?」
彼女達の後ろに立っていたのは、仮装無しのラフな格好をした暦だった。彼は二人の肩を優しく叩いて小声で何かをささやいている。私はゆっくりとしゃがみこみ、小さな魔女達と目線を合わせた。
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