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    「説明できない」
    紅花ルートで戦死した記憶があるクロードと青獅子ルートで戦死した記憶があるローレンツの話です。12月にクロロレオンリーイベントがあればそこで、実施されなければ11月のこくほこで本にするつもりで今からだらだら書いていきます。

    #クロロレ
    chloroethylene

    1.振り出し・上
     クロードが最後に見たのは天帝の剣を構える元傭兵の女教師だった。五年間行方不明だった彼女が見つかって膠着していた戦況が動き始めそれがクロードにとって望ましいものではなかったのは言うまでもない。

     生かしておく限り揉めごとの種になる、と判断されたのは故郷でもフォドラでも同じだった。人生はなんと馬鹿馬鹿しいのだろうか。だが自分の人生の幕が降りる時、目の前にいるのが気に食わない異母兄弟ではなくベレス、エーデルガルト、ヒューベルトであることに気づいたクロードは笑った。
    >>
     もう重たくて二度と上がらない筈の瞼が上がり緑の瞳が現れる。その瞬間は何も捉えていなかったが部屋の窓から差す光に照準が合った瞬間クロードの動悸は激しく乱れた。戦場で意識を取り戻した時には呼吸が出来るかどうか、視野は失われていないか、音は聞こえるのかそれと体が動くかどうか、を周りの者に悟られぬように確かめねばならない。クロードは目に映ったものを今すぐにでも確認したかったが行動を観察されている可能性があるので再び目を瞑った。

     山鳥の囀りが聞こえ火薬や血の匂いを感じない。手足双方の指も動く。どうやら靴は履いていないらしい。関節も痛みなく動かすことができた。再び一度耳を澄ませたが物が燃える音もクロードの他に人がいる気配も感じない。もう体を動かしてあたりを確かめても良いだろう、そう考えたクロードが身を起こすと寝台に乗せてあった本が大きな音を立てて床に落ちた。

     ガルグ=マクで寮生活を送る者は皆、朝日の光に眠りを遮られないように寝る前に雨戸を閉めるのだがクロードの部屋の雨戸は少し合わせが悪く隙間から光が差し込む。その形は忘れようがない。クロードが子供でいられた最後の一年間、毎朝見ていたものなのだ。室内履きなど履かず裸足のまま窓に近寄り雨戸を開ける。クロードの目の前に広がったのは士官学校の敷地だった。エーデルガルト達が捕虜を捕らえるにしてもクロードにとって庭のようなこの場所に留め置いて何の利があるのだろうか。明るくなった室内を眺めると身嗜みを整える為、壁に掛けておいた鏡が目に入る。鏡の中の自分はまだ頬髭もなく三つ編みが編めるほど前髪が長かった。当たり前だが頬を触ってみても髭の感触はない。椅子には士官学校の制服と級長の証である黄色い外套が掛けられていた。手に取って見てみればまだ子供の頃の細い身体に合わせて仕立ててある。

    「嘘だろ……」

     クロードは一人虚空に向かって呟いた。
    >>
     ローレンツが最後に見たものは破裂の槍を構えるシルヴァンだった。五年間行方不明だったベレトが姿を表しガルグ=マクがファーガスの拠点となってから膠着していた戦況が動き始めそれが帝国にとって望ましいものでなかったのは言うまでもない。

     フェルディナントがキッホルの紋章をローレンツがグロスタールの紋章を持っているからミルディン大橋の防衛を任された。何も不自然なところはない。だがその命令には恐ろしいほどの悪意が込められていた。だがシルヴァンがいるなら後を任せられる。最後に感じたのは頬に落ちる彼の涙だった。
    >>
     遠くで何かが崩れる音がしてローレンツは意識を取り戻した。戦場で意識を取り戻した際にはまず呼吸が出来るか確かめるように言われている。肺から喉に逆流した血が溜まっていた筈だが咽せることなく呼吸が出来た。山鳥の囀りが聞こえ頬には冷えた空気を感じる。五感のうち聴覚と触覚は無事であるらしい。付近に人の気配が感じられなかったのでローレンツは思い切って瞼を微かに上げてみた。

     部屋の中は薄暗く何がどこにあるのかよく分からない。寝返りを打ってもどこも体に痛みを感じなかった。手足の指は全て揃っており腕も足も動く。身体を起こした時、部屋の外からシルヴァンとフェリクスの話し声が聞こえた。自分は捕虜になったのだろうか。身代金はいくらなのだろう。頭を振って起き上がると伸ばした筈の髪の毛の感触がない。触ってみれば士官学校時代と同じ長さになっていた。

     治療の際に切られたのかもしれないと思い頭を触ってみたが特に怪我もない。大怪我を白魔法で一気に治すと帳尻合わせのように拒否反応が出る。人によってまちまちで吐く者もいれば体温や気温に関係なく寒気に襲われ毛布が手放せなくなる者もいた。ローレンツの場合は目眩なのだが目が回っている感覚はない。ローレンツは光源にして部屋の様子を伺う為ファイアーの呪文を唱えて魔法陣を出現させた。丸い緑の光がうっすらと室内を照らしていく。見覚えがあるものばかりが目に入りローレンツは絶句した。もう光源など必要ない。起き上がり寝台の脇が定位置の室内履きに足を突っ込んで窓に向かって直進する。手を伸ばして雨戸を開け、陽の光の元で振り返ってみればそこには実家から持ってきた三段重ねの給茶器があった。

    「何が起きたのだ……?」

     ローレンツは一人虚空に向かって呟いた。
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    赤クロ青ロレの話です。
    13.誘拐・上

     フレンが行方不明になった。クロードとローレンツは誘拐犯がイエリッツァであること、彼が死神騎士でありエーデルガルトの手の者であることを既に知っている。ローレンツが知る過去ではディミトリたちがフレンを見つけクロードが知る過去ではベレスとカスパルがフレンを見つけている。

    「ではこの時点でベレト…失礼、言い慣れないもので。ベレス先生は現時点で既に教会に不信感を持ち敵対すると決めていた可能性もあるのか」

     ローレンツの知るベレトは教会と敵対せずディミトリに寄り添っていたらしい。記憶についての話を他の者に聞かれるわけにいかないので近頃のクロードはヒルダにからかわれる位ローレンツの部屋に入り浸っている。彼の部屋に行けばお茶と茶菓子が出るので夜ふかし前に行くと夜食がわりになってちょうど良かった。

    「そうでもなければあの状況で親の仇を守ろうとしないと思うんだよな」
    「だが今、僕たちの学校にいるのはベレト先生だ」

     ベレスは戴冠式に参加していたらしいのでそこで何かあった可能性もある。クロードはどうしてもかつての記憶に囚われてしまう。

    「大手を振って何かを調べる良い機会なのは確 2090

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    紅花ルートで戦死した記憶があるクロードと青獅子ルートで戦死した記憶があるローレンツの話です。
    2.振り出し・下
     士官学校の朝は早い。日の出と同時に起きて身支度をし訓練をする者たちがいるからだ。金鹿の学級ではラファエル、青獅子の学級ではフェリクス、黒鷲の学級ではカスパルが皆勤賞だろうか。ローレンツも朝食前に身体を動かすようにしているがその3人のように日の出と同時には起きない。

     ローレンツは桶に汲んでおいた水で顔を洗い口を濯いだ。早く他の学生たちに紛れて外の様子を見にいかねばならない。前日の自分がきちんと用意していたのであろう制服を身につけるとローレンツは扉を開けた。私服の外套に身を包んだシルヴァンが訓練服姿のフェリクスに必死で取り繕っている所に出くわす。

    「おはよう、フェリクスくん。朝から何を揉めているのだ?」
    「煩くしてすまなかった。単にこいつに呆れていただけだ」

     そう言うと親指で赤毛の幼馴染を指差しながらフェリクスは舌打ちをした。シルヴァンは朝帰りをディミトリや先生に言わないで欲しいと頼んでいたのだろう。

    「情熱的な夜を過ごしたのかね」

     呆れたようにローレンツが言うとシルヴァンは照れ臭そうに笑った。

    「愚かすぎる。今日は初めての野営訓練だろう」

     フェリ 2066

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    5.初戦・上
     三学級対抗の模擬戦はクロード達の勝利に終わった。これもクロードの記憶とは異なっている。容赦のなかったベレスの記憶があるクロードは事前に何か工作するかベレトに探りを入れてみたが拒否された。こんな下らないことに全力を尽くすなという意味なのか気高い倫理観の持ち主なのかはまだクロードには分からない。腹下しの薬は冗談だったが賛同してもらえたら武器庫に忍び込んで他学級の使う武器の持ち手にひびを入れてしまうつもりだった。

     母国やデアドラと比べるとガルグ=マクは肌寒い。気に食わない異母兄が王宮で働く女官を寝室に引っ張り込むような寒さだ。それでも来たばかりの頃と比べればかなり暖かくなっている。過酷な太陽の光に慣れたクロードの目にも山の緑は目に眩しく映った。長時間、薄暗い書庫で本を物色していたからだろうか。廊下に差す光に緑の目を細めながら歩いていると大司教レアの補佐を務めるセテスに声をかけられた。クロードは規則違反に目を光らせている彼のことがあまり得意ではない。

    「ちょうど良かった。クロード、後でベレトと共にこちらに顔を出しなさい」
    「分かりました。セテスさんは先生が今どの辺りにいる 2100

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    9.典儀・上

     情報には出元と行き先がある。それを見極めずに判断を下すと間違いが起きる。前節、カトリーヌがロナート卿の所持品から見つけた大司教レアの暗殺計画に関する密書は様々な波紋を読んだ。真偽の程は定かではないが対応せねばならない。

     謁見の間に呼び出されたベレトから今節の課題を聞いたクロードは教会があの密書をどう判断したのか悟った。今回も彼の記憶と同じく何者かが教会を混乱させる為に作成した偽物であると判断したのだ。そうでなければ士官学校の学生に警備や見回りを担当させないだろう。だがクロードにとっては丁度良かった。賊の狙いが何処であるのか確かめる為という大義名分を得て修道院の敷地内を直接、自由に見て回れる。賊が聖廟の中で何かを探し、奪いに来たがそこでベレスが天帝の剣を手に取り賊を撃退したことをクロードは覚えているのだがだからといって日頃入れない聖廟を直接探る機会を逃したくはなかった。それにロナート卿の叛乱の時と同じくまたクロードたちが当事者になっている。詳しく調査しておいて損はないだろう。

     ガルグ=マクにはフォドラの外からやってきた住人がクロード以外にも存在する。自然と祖先を 2082