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    111strokes111

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    クロロレ。ェュ前提なのでご注意ください。
    紅花ルート。

    有情たちの夜.15「枠の外へ3_5」 クロードの腹立たしい点はいくつもある。まず、ヒューベルトたちと考えが重なる点があったことが腹立たしい。英雄の遺産に頼らずやってのけようとしたこと、全力を尽くさなかったこと、そのどちらも神経に触る。
    「クロードは人の手だけで何とかしようとしたのだ……。知識は間違っていることがあるし、信頼も儚い。未来は観察できないからな」
     親友の淹れた紅茶を口にして気が緩んだのか、ローレンツはそう呟いた。領主は即決する力と判断を保留する力、矛盾する二つの力をどちらも求められる。
    「ローレンツ、これは私見でしかない。だが私が思うに……最後に残るのは感情や想像力なのだ」
     当事者である自分なしに全てが決まっていくことへの憤り、そして悲しみがヒューベルトの主君エーデルガルトの原動力だ。ローレンツは彼自身が傷つかぬよう、得するようにクロードからお膳立てされたがそれでもひどく馬鹿にされた気分だろう。
    「おや、想像力はともかく貴殿は感情に振り回された王国の者たちに引導を渡して回っていたではありませんか」
     アリアンロッドでもタルティーンでもフェルディアでもフェルディナントは返り血まみれになっていた。彼の燃えるような橙色の髪と違って死人の血はどす黒く、布にこびりついたまま固まると擦れて引っ掻き傷ができる。彼はあの寒い王国でも湯が沸くまで我慢できず、川や池で血を洗い流していた。貴族らしい身なりを保つために野蛮なことをしているのだが、びしょ濡れの彼が火にあたりに行くと兵たちが貴族らしくない、と言って喜ぶ。
    「ヒューベルト、混ぜっ返すのはやめてくれたまえ」
     苦境はフェルディナントから優雅さを奪うことに失敗した。そして彼の思索はより深い領域まで到達し、政策に活かされることも多い。
    「笑顔の奥でどんな感情を抱いていたのやら……」
    「ローレンツ、私が共にいるのだから怖がらずに自分の感情を認めて欲しい」
     ヒューベルトのフェルディナントに対する評価は戦乱の時を経て、目障りで薄っぺらな理想主義者から生まれついての人たらしへと変化していった。



     そもそもローレンツはクロードを疑いの目で見ていた。徹底的に疑ってかかり、理性で彼の人柄や行為に判断を下した結果、なんとも言いがたい関係になっている。
    「喜びを感じようとしても常に惨めさと寂しさがまとわりついてくる。現にこうして尋問まで受ける羽目になった」
    「矛盾など感じる必要はない。全て自然な感情ではないか」
     そう言えば先ほどヒューベルトはまず、と言った。クロードはフェイルノートの損壊以外に何をやらかしたのだろうか。
    「こちらは貴殿が彼と共謀していない、という確証が欲しいだけです。では密貿易の件はご存知ですか?」
    「当家の立場では推理しかできない」
     デアドラ防衛戦で軍港が使用不可能になったため、帝国軍は民間用の港を接収した。活動拠点を奪われても商人や漁師たちは食べていかねばならない。彼らはデアドラ市の対岸にある小さな島に船を移した。その島はかつてクロードが平民たちや商船や漁船を避難させていた島の一つで、急拵えの設備しかない。保安を名目として取り扱いできる荷の量には制限がかけられた。超過分の取引は全て密貿易扱いになる。
     逮捕も拿捕も帝国の匙加減次第という危うい状況にも関わらず、その島は戦乱で壊滅的な打撃を受けたファーガスとの貿易の拠点となっていた。彼の地は復興のため、ありとあらゆる物資を必要とする。そこに最近やたらとスレンやパルミラからの荷が増えたらしい。
     リーガン領の管理を任せるが港湾および海上を除く、という帝国本土からの通達をローレンツの父エルヴィンが素直にのんだ理由はこれか、とローレンツは悟った。帝国本土から派遣された官吏たちが大型船が接岸出来る港湾関係を取り仕切っている。ファーガスと旧リーガン領の反帝国派同士連携させないために彼らは必死だ。
    「ヒューベルト、恣意的な運用に私は反対だ。公正でなくては我々は正当性を失う」
    「フェルディナントくん、フェルディアはまだ……」
     フェルディナントの表情だけで状況が分かる。民たちにはまだ、どの土地の小麦が口に入っているか考える余裕はない。
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    9660moyunata

    DONEテレビゲームをするだけの現パロ年後クロロレ
    光属性ですご安心ください。
    「ローレンツはゲームとかしないのか?」
    「そんなもの、時間の無駄だろう」
    やっぱりそう言うと思った。庶民の娯楽に現を抜かしてる暇なんてありませんって顔に書いてある。
    「じゃあさ、1回だけ対戦付き合ってくれないか? このゲーム1人でもできるんだけどさ、せっかく買ったんだしちょっとくらい人と遊んでみたいんだよ」
    「仕方がないな、1度だけだぞ」
    ローレンツはせっかくだから、とかそういう言葉に弱い。あいつは俺のことに詳しいなんて言っているが、俺だって負けてない。ローレンツが俺のこと見続けているなら同じだけ俺もローレンツを見ているんだ。
    今始めようとしているゲームはいわゆる格闘ゲームだ。さすがに初心者のローレンツをこてんぱんにするのは気が引けるから、あえて普段使わないキャラクターを選ぶ。それでも俺の方が強いことに変わりはない。手加減しつついい感じの差で勝たせてもらった。
    「......。」
    勝利ポーズを決めている俺のキャラクターをローレンツが無表情で見つめている。よし、かかったな。
    「クロード、もう一戦だ」
    「おっと、1回しか付き合ってくれないんじゃなかったのか?」
    「せっかく買ったのに 1372

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    紅花ルートで戦死した記憶があるクロードと青獅子ルートで戦死した記憶があるローレンツの話です。12月にクロロレオンリーイベントがあればそこで、実施されなければ11月のこくほこで本にするつもりで今からだらだら書いていきます。
    1.振り出し・上
     クロードが最後に見たのは天帝の剣を構える元傭兵の女教師だった。五年間行方不明だった彼女が見つかって膠着していた戦況が動き始めそれがクロードにとって望ましいものではなかったのは言うまでもない。

     生かしておく限り揉めごとの種になる、と判断されたのは故郷でもフォドラでも同じだった。人生はなんと馬鹿馬鹿しいのだろうか。だが自分の人生の幕が降りる時、目の前にいるのが気に食わない異母兄弟ではなくベレス、エーデルガルト、ヒューベルトであることに気づいたクロードは笑った。
    >>
     もう重たくて二度と上がらない筈の瞼が上がり緑の瞳が現れる。その瞬間は何も捉えていなかったが部屋の窓から差す光に照準が合った瞬間クロードの動悸は激しく乱れた。戦場で意識を取り戻した時には呼吸が出来るかどうか、視野は失われていないか、音は聞こえるのかそれと体が動くかどうか、を周りの者に悟られぬように確かめねばならない。クロードは目に映ったものを今すぐにでも確認したかったが行動を観察されている可能性があるので再び目を瞑った。

     山鳥の囀りが聞こえ火薬や血の匂いを感じない。手足双方の指も動く。どうやら靴は履 2041