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    「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。

    #クロロレ
    chloroethylene

    15.鷲獅子戦・上
     フレンが金鹿の学級に入った。クロードにとっては謎を探る機会が増えたことになる。彼女は教室の片隅に座ってにこにこと授業を聞いてはいるが盗賊と戦闘した際の身のこなしから察するに只者ではない。兄であるセテスから槍の手解きを受けたと話しているがそういう次元は超えていた。

    「鷲獅子戦にはフレンも出撃してもらう」

     やたら大きな紙を持ったベレトが箱を乗せた教壇でそう告げると教室は歓声に包まれた。これで別働隊にも回復役をつけられることになる。治療の手間を気にせず攻撃に回せるのは本当にありがたい。今まで金鹿の学級には回復役がマリアンヌしかいなかった。負担が減ったマリアンヌの様子をクロードが横目で伺うと後れ毛を必死で編み目に押し込んでいる。安心した拍子に髪の毛を思いっきり掻き上げて編み込みを崩してしまったらしい。彼女もまたクロードと同じく秘密を抱える者だ。二重の意味で仲間が増えたことになる。五年前のクロードは周りの学生に興味は持たず大きな謎だけに目を向けていたからマリアンヌのことも流していた。どこに世界の謎を解く手がかりがあるか分かりはしないのに勿体ない。

    「クロード、地図を広げたいから手伝ってくれ」

     ベレトから声をかけられたクロードは席を立って手を貸した。床に広げた端から紙が丸まらないように駒を置いていく。各学級に全く同じグロンダーズの地図が与えられているがきっとカスパルのいる黒鷲の学級が圧倒的に有利だろう。ベレトは地図の周りに集まるように言った。背が低いフレン、リシテアとヒルダ、それにイグナーツが前列に座り背が高いローレンツやラファエルは後ろから立ったまま覗き込んでいる。地図に置かれた駒は色分けされていないのでとても分かりにくい。

     べレスは無表情で近寄り難い美人だったが身なりに無頓着でそこに闇を感じた後宮育ちのクロードは彼女と親しくなれなかった。クロードは飾らない美しさを愛でられるような健やかな育ち方をしていない。出身地や一族の利権を背負った妃同士の過酷な争いに身をおくうちに心を病んで肉体と精神が乖離していくと皆、何故かまず髪の手入れが出来なくなっていき次第に身につける服にも構わなくなっていく。べレスの無頓着さは今までの人生において外見で判断されなかった証なのだろうが当時のクロードは自分が感じた闇のようなもの、を拭い去ることがどうしても出来なかった。パルミラでの体験がクロードの認知を歪ませていたのだろう。そういった心境が表に漏れ出していたから最後にべレスはクロードを見逃さなかったのかもしれない。

     ベレトもべレスと同じく無表情で女子学生たちが騒ぐ程度には整った顔立ちをしていて身なりに構わないのだが闇は感じない。級長として彼の補佐をしていると些細なところが抜けていることが分かった。無表情で無口だが人間らしく主張はいちいちまともだ。

    「先生、駒は色別に箱を分けることにした筈だが」

     ベレトもクロードもローレンツが指さした方向を見た。確かに箱が二つある。気を利かせたイグナーツが箱を二つとも持ってきてくれた。赤青黄とはいかないがこれで三色の駒を使うことが出来る。

    「ありがとう、イグナーツ。早速始めようか。皆、誰が一番の強敵だと思う?」

     ディミトリやフェリクス、それにエーデルガルトやドロテアの名が上がる。クロードにとって一番の強敵はやはりエーデルガルトだ。

    「では皆彼らと絶対に一騎打ちをするな。弓や魔法が得意な者と槍や斧が得意な者は絶対に対となって離れずに行動すること」

     華やかな一騎打ちは騎士物語でも人気の題材だ。だが戦場が日常であったベレトは事あるごとにそれを否定する。ベレトは白い駒で茶色い駒の四方を囲った。

    「これが理想だ。この形を作る為に大軍を用意するし敵を狭いところに誘い出す」

     べレスも同じことをエーデルガルトに話したのだろう。クロードの記憶では突出したローレンツが真っ先に撃破されている。エピタフであったべレスは戦場において常にエーデルガルトの傍を離れなかったしドロテアはペトラとリンハルトはカスパルとヒューベルトはフェルディナントと必ず組まされていた。インデッハの小紋章を持つハンネマンが強いのは当然だが紋章を持っていないマヌエラも負けず劣らず強い。ハンネマンもマヌエラも自分のように強い戦士を育成しようとする。だがべレスもベレトも弱いままでも戦場で生き残れる術を教えようとしていた。最後に立っていられる者が一番強い。

    「逐次投入は駄目って話だな?そうだろ、先生」
    「そうだ。そして突出するのは逐次投入と変わらない。今後も戦う時はまず地形をよく見て敵を誘い込むように」

     皆、ベレトの言葉に耳を傾けている。クロードは級長としてベレトの補佐をするようになってから今までよりも更に地図をよく見るようになったし地理の本を読むようになった。こういう教えが生死を分けていく。クロードはデアドラを熟知しているつもりだったがきっと彼の教えを受けた五年後の布陣は全く異なる筈だ。
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    13.誘拐・上

     フレンが行方不明になった。クロードとローレンツは誘拐犯がイエリッツァであること、彼が死神騎士でありエーデルガルトの手の者であることを既に知っている。ローレンツが知る過去ではディミトリたちがフレンを見つけクロードが知る過去ではベレスとカスパルがフレンを見つけている。

    「ではこの時点でベレト…失礼、言い慣れないもので。ベレス先生は現時点で既に教会に不信感を持ち敵対すると決めていた可能性もあるのか」

     ローレンツの知るベレトは教会と敵対せずディミトリに寄り添っていたらしい。記憶についての話を他の者に聞かれるわけにいかないので近頃のクロードはヒルダにからかわれる位ローレンツの部屋に入り浸っている。彼の部屋に行けばお茶と茶菓子が出るので夜ふかし前に行くと夜食がわりになってちょうど良かった。

    「そうでもなければあの状況で親の仇を守ろうとしないと思うんだよな」
    「だが今、僕たちの学校にいるのはベレト先生だ」

     ベレスは戴冠式に参加していたらしいのでそこで何かあった可能性もある。クロードはどうしてもかつての記憶に囚われてしまう。

    「大手を振って何かを調べる良い機会なのは確 2090

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    5.初戦・上
     三学級対抗の模擬戦はクロード達の勝利に終わった。これもクロードの記憶とは異なっている。容赦のなかったベレスの記憶があるクロードは事前に何か工作するかベレトに探りを入れてみたが拒否された。こんな下らないことに全力を尽くすなという意味なのか気高い倫理観の持ち主なのかはまだクロードには分からない。腹下しの薬は冗談だったが賛同してもらえたら武器庫に忍び込んで他学級の使う武器の持ち手にひびを入れてしまうつもりだった。

     母国やデアドラと比べるとガルグ=マクは肌寒い。気に食わない異母兄が王宮で働く女官を寝室に引っ張り込むような寒さだ。それでも来たばかりの頃と比べればかなり暖かくなっている。過酷な太陽の光に慣れたクロードの目にも山の緑は目に眩しく映った。長時間、薄暗い書庫で本を物色していたからだろうか。廊下に差す光に緑の目を細めながら歩いていると大司教レアの補佐を務めるセテスに声をかけられた。クロードは規則違反に目を光らせている彼のことがあまり得意ではない。

    「ちょうど良かった。クロード、後でベレトと共にこちらに顔を出しなさい」
    「分かりました。セテスさんは先生が今どの辺りにいる 2100

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    9.典儀・上

     情報には出元と行き先がある。それを見極めずに判断を下すと間違いが起きる。前節、カトリーヌがロナート卿の所持品から見つけた大司教レアの暗殺計画に関する密書は様々な波紋を読んだ。真偽の程は定かではないが対応せねばならない。

     謁見の間に呼び出されたベレトから今節の課題を聞いたクロードは教会があの密書をどう判断したのか悟った。今回も彼の記憶と同じく何者かが教会を混乱させる為に作成した偽物であると判断したのだ。そうでなければ士官学校の学生に警備や見回りを担当させないだろう。だがクロードにとっては丁度良かった。賊の狙いが何処であるのか確かめる為という大義名分を得て修道院の敷地内を直接、自由に見て回れる。賊が聖廟の中で何かを探し、奪いに来たがそこでベレスが天帝の剣を手に取り賊を撃退したことをクロードは覚えているのだがだからといって日頃入れない聖廟を直接探る機会を逃したくはなかった。それにロナート卿の叛乱の時と同じくまたクロードたちが当事者になっている。詳しく調査しておいて損はないだろう。

     ガルグ=マクにはフォドラの外からやってきた住人がクロード以外にも存在する。自然と祖先を 2082