アイシングクッキー【アイシングクッキー】
シュゴッダムの王都の片隅で暮らしていたカメリアであったが、まさか世界中を旅にすることになり、なおかつ王たちと関わり合いになるとは思わなかった。
「来ていたのか」
「リタ様」
フラピュタル城の玄関先でカメリアはリタ・カニスカと会った。
リタは極寒の国王だ。性別は公表されておらず、どっちだろうとなりつつも性別はリタ様でいいのでは……? となったが女性らしい。
「エプロン?」
「ギラに頼まれて、お菓子作りを」
何日か前の話だ。
お昼まで寝ているつもりだったのだが、ギラに起こされた。彼が頼んできたのはクッキー作りだった。子供たちに配る予定のクッキーを作るはずだったパティシエが風邪を引き、誰か代理を探していたのだ。カメリアは元々はパン屋に勤務していてパン作りも出来るがお菓子作りも出来た。
白いエプロンを付けている。
「お菓子?」
「アイシングクッキーを頼まれたんですよ」
「……アレか」
アイシングクッキーはクッキーをアイシング、粉糖と卵白を混ぜて作ったクリームで飾り付けたクッキーだ。地味なイメージのあるシュゴッダムだが、飾っているところは飾っているのである。
アイシングクッキーはクッキー生地を作り、アイシングを塗り、乾燥させるためやや時間がかかるが、無事にカメリアは作り終えてギラと共に子供たちに配った。
「ヒメノ様たちにも配ろうと想って」
「どんなのを作ったんだ」
沢山やいたし、居候の身としてヒメノ達にも配ろうとカメリアは一足早く帰ってきたのだ。
バスケットの中からカメリアはクッキーを出す。
「もっふんのアイシングクッキーです」
透明なラッピング袋に入っていたのはもっふん、イシャバーナでやっているアニメのキャラクターだ。
もっふんの形にクッキー生地を肩で抜いて、白いアイシングを縫って乾かした。
「……もっふん?」
「もっふんです。リタ様……?」
「クッキーだな」
「クッキーですよ」
「食べられるのか」
「美味しいですよ。……食べます?」
味には自信がある。勤めていたパン屋で学んだのだ。
「貰う。……食べる……飾るとかできないのか」
「一か月は持ちますよ。直射日光あてなければ」
リタが手を差し出してきたのでカメリアはクッキーをのせる。
「ゴッカンだから平気」
「ありがとう」
「どういたしまして」
「仕事に行く」
「頑張ってください。リタ様」
クッキーをしまったリタはその場を去る。
(あの人、もっふん好きですよね)
リタとカメリアが初めて会ったのはトウフ国である。ギラが連行された後だ。離れ離れになってからカメリアはヤンマ・ガストやヒメノ・ランのところで世話になっていた。
ヤンマのところに居たらリタと出会ったのだ。
事情聴取をした後のリタは叫んでいたが、公平な判決をしてくれたのは確かだ。
「また作りましょうか」
もっふんクッキーは子供たちにも好評だったので機会があればまたつくることにした。
「……もっふん。ぎりぎりまで飾っておこう」
リタは上機嫌にもっふんアイシングクッキーを眺めてから懐にしまい、仕事を果たしに行きつつ、クッキーを大事にした。