旭暉瞼の裏に日差しを感じるも、重い瞼は未だ持ち上がることが無く、まだ覚醒しきらない感覚は聴覚に集約される。
すぐ傍で、静かに、深く、そして長く繰り返される呼吸。
緩やかに耳に届く音に自然と同調する呼吸のリズムは心地よく、静かに意識が浮上する。
夢と現の狭間でまどろむこの時間はイザナにとって数少ない心が凪ぐ貴重な時間。
布擦れの音をたて無い様、身じろぐことなく瞼を持ち上げ視線だけをそちらへ向ける。
壁ほぼ一面の窓には今はシアーカーテンのみで覆われ、朝日が優しく部屋を照らす。
逆光に浮かぶ男の姿。
ヴィラバドラアーサナ。
怒りが起源のこのポーズは、怒りや悲しみを愛と思いやりに昇華すると言われているらしい。
強く勇ましく、そして優しいこの男に良く似合うと思う。
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