「たまにはこういうのもいいな」「何か言い訳はあるか」
「ございません……」
とんがり帽子と白いローブがトレードマークの駆け出し魔術師はうなだれていた。現在は帽子を膝に抱えているため、彼女の特徴のひとつでもある夕焼けのような赤毛がさらりと肩からこぼれ落ちる。
同時に目に入るのは、その赤毛と同じ色をした三角――彼女の頭部から生えているそれは、獣の耳のような形をしていた。
はあ、と。キャスターは大きくため息をついた。
その重々しい様子に、びくりとリツカの身体が震える。
「いいか嬢ちゃん。それは部分的な変身薬だ」
「うん……しってる……」
「そうかい、そいつぁ話が早いな」
リツカが縮こまりながら座っている、工房に設置された椅子。その目の前に立ち、彼女を見下ろしながら説教モードとなったキャスターの瞳は、苛烈に輝いている。
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