鯉登音之進は不可思議だ。
自分勝手なようでいて、いつだって選択肢をこちらへ寄こしてくる。面倒なのは好きじゃない。自分の意思で考えるより流されてしまった方が早いし、何より下士官の立場上そうした方が得策であることが多かったからだ。
鯉登音之進は諦めない。
自分がどれだけ身分違いを説いても、機能しない胎を持つΩにどれだけ価値が無いかを切々と語って見せても聞く耳持たない。いや、聞いてはいるのだが頑として聞き入れてくれないのだ。これには困り果てた。どこに世界に子も孕めないΩを欲しいと熱心に口説いてくる者がいるだろうか。物好きか、あるいは面白半分か。そう思っていた事がバレて手酷く抱かれた事もあった。ほぼ襲われたといっても差し支えないような有様のボロ雑巾のようになっている俺をみて顔を青くし、すまないすまない悪かった許してくれと謝りながら身体を清められた時には、彼の行動の真意が全く分からず恐怖すら覚えたほどに、彼は自分には理解できない生き物だった。
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