夜を越えて 後編 次に会ったとき、ジェイドは学内のカフェテリアでひとりでコーヒーを飲んでいた。
飲んでいたと言うか、とっくに空になったらしいカップは持ち上げられらる事もなく、勉強に集中している風でもないジェイドはただぼんやりと窓の外を見ている。そこに何があるわけでもないのに、焦点を結んでいないようにも見えるジェイドの瞳には、一体なにが映っているんだろう。
断りもなく、同じテーブルのイスを引いて向かいの席に座れば、その気配に気付いたジェイドが億劫そうに視線を上げて僕を見た。そして僕だと分かった瞬間少し目を開き、でもその視線はすぐにそらされてまた窓の外に向けられる。
「席なら他にも空いていますよ」
「えぇ。でも僕はここがいいんです」
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