Calling潮騒を遠くに聴きながら、ウェドは灯りもつけずに床板の継目を見つめていた。
「……」
深く、大きく、息を吐く。苛立ちと焦燥が胸を押し潰していくようで、気を落ち着かせようと火をつけた煙草を持つ手が震える。あの時アルダシアに持ちかけられた話が、今もずっとウェドの頭の中を巡っていた。
『取引をしようじゃないか、ディアスくん。なに、お前の大事なテッドをどうこうしようって言うんじゃない。そう怖い顔をするな…』
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「…何が取引、だ。まさかお前の言うことをこの俺が信用すると思っているわけじゃないだろ」
「するさ、今回ばかりはな。…情報をやる。だからお前の力を貸せ、ウェド」
「気安く呼ぶな。誰がお前の手駒になどなるものか」
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