絶頂ッたれ◯リオカート本橋依央利 10歳。
「本橋ー、今日帰ったらマ◯オカートやろうぜ!」
「え?ぼ、僕…?く、倉田くん僕のことを誘ってくれたの?」
五限目の終了後、隣の席の倉田が依央利のことをゲームに誘った。本橋は、動揺のあまり、自身の黒いペンケースを教室のホコリまみれの床に、中身を全て落っことしてしまった。
(え?!いいのかな!?僕、ゲームなんてやったことないけど…。で、でも、折角倉田くんが誘ってくれたんだし…!!
それに、ゲーム…やってみたい…かも!)
依央利は初めてのクラスメイトからの遊びの誘いに胸を高鳴らせていた。もしゲームで倉田のことを満足させてあげられたなら、喜んでくれるかもしれない。初心者が経験者に勝てるとは到底思っていないが、依央利は他人より器用な方だ。
操作とコツさえ覚えてしまえば、きっと倉田の丁度いい対戦相手になれるだろう。
「うん!じゃあ宿題終わったら倉田くんの家にお邪魔するね!!あ、倉田くんの宿題も僕がやって………」
「あー!!いい!そーいうの良いって!!それよりとっとと終わらせてなるはやで来いよな!」
「うん!楽しみだなぁ!」
依央利は帰宅後、ランドセルから乱雑にプリントを抜き取り、与えられた宿題をテキパキとこなし、倉田の家に向かった。
(ゲーム…!!楽しみだなぁ!僕、倉田くんのこと楽しませてあげたいなぁ…!)
期待に胸を膨らませながら、依央利はインターホンを押した。
「倉田くん!遊びに来たよ!僕、初心者だから最初はあんまり楽しめないかもしれないけど、頑張って覚えて倉田くんといい勝負できるように努力するから!!」
「気にすんなって!最初は皆下手くそなんだしさ!」
………30分後
「お前とやってもつまんねぇ、もうゲームやめようぜ。」
本橋依央利 23歳。
「……ってことがあって、子供の言葉ってストレートだよねぇ。」
「そ、それは酷いですね…」
「そうだよ!!!いくら依央利くんのゲームの腕前が超がつくほどのド低下手くそだとしてもそんな言い方ッッッッ!!!!酷すぎる…!! 」
「テラさん…何一つフォローになっていませんよ。」
テラや理解がガヤを入れる中、ふみやと依央利は、マ◯オカートでcpu参戦していた。
依央利はコントローラーをガチャガチャと動かしているが、その動きは余りにもデタラメで、cpuからもどんどんと先を越されてしまっている。
依央利がモタモタとしている間に、ふみやはとっくの昔にゴールしてしまい、その後に続くかのようにcpuがどんどんとゴールしていき、依央利はゴールすらできずに最下位になってしまった。
「いえ〜い、俺2位。」
「いやアンタもcpuに負けてんのかい。」
「cpuの設定『つよい』にしてるから仕方ないじゃん。こんなの勝てないよ。」
「ていうかこれだけ人数いるのに何で1対1なんですか?確か…まだ家にはコントロールがありましたよね?折角なんだからもっと皆さんのセクシープレイを拝見したいです。」
「僕明日も仕事だから見る専。」
「僕はゲーム未経験者なので…」
「私はゲームなどという不健全な行為はしない。」
「猿川くんは勿論ボイコット。」
「大瀬くんは来てすらいません。」
「ほら全員やる気ないじゃん」
「全員やる気ないですね。」
「結局やる気ない奴に何やらせても無駄なんだよね、だったら自分でやったほうが早いっていう…」
「何かふみやくんだけ別の話ししてない?」
ふみやは勝利できたことに満足したのか、大皿に盛られた茶菓子を多めに引っ摑むと、そそくさと部屋に戻ってしまった。
「ふあぁ……」
ふみやが出ていったのと同時に、理解の大きなあくびがリビング全体に響き渡った。
「では私はもう就寝しますね。くれぐれも夜ふかしはしないように!」
「おや理解さん、では天彦も……」
「先生、来ないで下さい。」
「𝓸𝓱…𝓢𝓮𝔁𝔂…」
「ー!!!ふみやくん僕が食べようと思ってたチーズクラッカー全部取ってったんだけど!!ほんとムリ!!
絶対に取り返してやる!!」
「あ、テラさんそんなことしなくても僕が作………」
依央利がテラに言い終える前に、テラはズカズカとふみやの自室に向かっていった。あの感じはきっと長時間揉めるのだろう。
「………って、聞いてないよね〜…」
依央利は呆れ笑いをしながら、そそくさと散らばったお菓子の袋を拾い上げる。
「………ん?」
かたん、と音がなったと思い依央利が音がした方向へ向かうと、そこには肩に毛布を掛けた大瀬がシンクにカップラーメンのスープを捨てていた。
「………」
「お〜お〜せ〜さぁ〜ん?????」
「……………」
「こんな時間にお夜食ですかぁ〜〜???あれれ???これはまた随分と身体の健康を害するゴミクソ添加物の入ったカップラーメンを食ってやがりましたねぇ〜〜〜????そんな縮れた麺を飽きるくらい食って、味覚爆発してるんですかねぇ???」
「……………………」
「ちょっと大瀬さん無視は駄目でしょ無視は!!!!せめて何か僕に罵倒でも返してみなさいよアナタ!!!
さぁ!!!早く!!!僕に罵倒を!!!」
「……………けぷ、」
「あ、お腹いっぱいになったんだぁ!良かったね…!!
…って『けぷ』じゃないよ!!!何僕以外のモノでお腹いっぱいにしてるの!!!この浮気者!!!!アバズレ!!!」
「怖…………付き合ってないし…アバズレでもないし…」
ヒステリックに捲し立てたと思ったら、依央利は大瀬のお腹に耳をそっと当てた。
「あぁ〜こんなに膨らんで、お腹の子はさぞかし栄養過多なんでしょうねぇ?」
「いおくんどうしたの」
「お腹の子、いったい何ヶ月目なんですかぁ?」
「5分前」
「あーあ、こんなに大きくなっちゃったらもう産むしかないですねぇ???取り返しつかなくなっちゃいますねぇ?」
「そのうち血肉となって跡形もなく消え失せるから心配しないでいいよ。」
大瀬はお腹周りに腕を回してくる依央利を無視し、三角コーナーの中身をゴミ箱に捨てた。
「ーーー!!!それ僕の仕事なのに!!!」
「…いおくんゲームやってたの?」
「聞いてないし!!!」
「マ◯オカートだ……自分も小学生の時はよく友達の家でやってたよ。」
「微笑ましいね。」
「やらなくなったのは虐められるようになってから。」
「触れづらい!!!!」
依央利の腕をどけて、大瀬はとてとて、とさっきまで依央利が座っていたほうにちょこん、と座った。
「やろ。」
「え…?やだ……、大瀬さん積極的………//////」
「ワッッッ!!!スラッシュマークキきつい!!!十年前の占いツ◯ールみたいだね。」
「ぶち犯すよ」
依央利も大瀬に続くように、彼の隣に座ってコントーローラーを握った。
「いおくん誰使いたい?ワ◯オ?」
「え、何でワ◯オ一択?あんま初めの選択肢でワ◯オ出てこないけどね。」
「小学生ぶりだから…あんまりいおくんの相手にならないかもしれないけど…」
「ううん!大瀬さんとゲームできるのが楽しみだから…!気にしないで。」
「じゃあ僕ワル◯ージとは◯ちゃんバギー使うね。」
「チョイスが僕のこと倒す気しかないんだけど。」
依央利はカタカタと適当なキャラと車種を選択した。
「ピー◯姫にするんだ。」
「うん。」
「なんで?」
「僕いおり姫だから」
「…あーね?」
「やめてよ。ちゃんとツッコんでよ。僕めっちゃ滑ったみたいじゃん」
「お、…面白いよ?」
「やめて?大瀬さん気を使われるなんて奴隷、罪悪感で涙5Lくらいちょちょ切れそうだから。」
「じゃあ正直に言うね……面白くはないかな。」
「急に正直になるね。いーや、間違いないね。僕らが最強バスターブロ…「あ、始まるよ。いおくんエンジン踏まないと遅れちゃうよ。」
「もぉ〜大瀬さん…!敵にアドバイスしちゃ駄目でしょ?ま、そういうとこも嫌いじゃないけど」
「そういうのいい、大丈夫。僕最強だから。」
「多分キミ呪◯廻戦見たでしょ?」
依央利は、コントローラーのボタンを強く押す……、ふりをした。
(駄目駄目、…本気出しちゃったらこの人が負けちゃうし。)
大瀬が隣で真剣に画面を見つめる中、依央利はアクセルボタンをわざと遅れて押した。
(アクセルを踏まないと大瀬さんに怪しまれちゃうし。あくまで真剣にやってるけど、下手くそだっていう体で思われるように…。)
そう、依央利はゲームが下手などではない。むしろその逆である。
本当は、依央利という男はゲームが大の得意なのである。しかし、小学生のとき、同じクラスメイトとゲームで遊んだ際に初心者にも関わらず、持ち前の器用さと容量の良さでボロ勝ちしてしまい、クラスメイトのことを酷く傷つけてしまった。
(…あの子は悪くない、そりゃ子供だもんね。誰だって初心者にボロ負けしたら悔しいだろうし、小学生だったら不機嫌になっちゃうのも無理ないよね。
……気が回せなかった僕のせいだ。)
あの時自身は悪くないとはいえ、クラスメイトを深く傷つけてしまった依央利は、次の日から誰とゲームをやるにも所謂『接待プレイ』しか行わなくなった。
そうしたほうが、周りの人も喜んだし、依央利にとってご主人様が喜んでくれることが一番の幸せだから、何一つ不満はなかった。
「じゃあ大瀬さん!頑張ろうね!」
「………うん。」
(あれ?気のせいかな。大瀬さん、少し怒ってる気がする。
そんなわけないよね!だって、ゲームに誘ってくれたのは大瀬さんだし!)
「………いおくん、手加減はしないほうがいいよ。」
「……………、へ??」
「いおくんが手加減する必要、ないから。」
「それってどういう…………、
………って大瀬さん何してるの!?!?」
大瀬はアクセルボタンを依央利よりも早く踏んでいた………はずだ。なのに、何故、遅くボタンを押したはずの依央利のほうがリードているのだろうか。
(っまさか………!!!大瀬さん…!!!)
そう、大瀬は依央利よりも早くアクセルボタンを踏んでいた。……余りにも早すぎたのだ。は◯ちゃんバギーのタイヤはアクセルの踏みすぎで一度大きくパンクしてしまった。
そしてそのあと、大瀬は遅れてスタートダッシュをした。
「っっっはぁあああああああああああああああ!?!?!?!?大瀬さんわざとパンクさせたでしょ!?
何やってるの…?!そんなことしちゃあ、大瀬さん負けちゃうよ……!?」
「………わざとなのはいおくんもでしょ。」
「……っ!」
「いおくん、わざと自分に負けようとしてたでしょ…。そんないおくんとゲームしても、つまらないよ。」
「ち、違うよ!僕は本当に……」
大瀬はカチリ、とゲームの電源を切った。
そして、依央利と大瀬が揉めている中、桃色の髪の毛がピクリ、と動いた。
(っべ、ここリビングかよ。こんなとこで寝てたらまたあの馬鹿から文句いわれちまうな……
…?なんだ、いおと大瀬まだ起きてんのかよ…)
「……また自分に嘘ばっかり。…本当は思いっきりやりたいくせに。」
「っ、違うよ…!別に僕は大瀬さんが楽しんでくれたらどうでもいいんだってば…!」
「いやだ。いおくんが楽しめないのに、やりたくない。」
「だから…!!僕は大瀬さんが(ゲームで僕に勝って)気持ち良くなってくれれば良いんだって…!!僕が好き勝手やったら、大瀬さん怪我(主に指を)しちゃうよ!」
「別にちょっと(指が)痛くなるだけでしょ…首吊るよりも、全然苦痛じゃない。」
「ぼ、僕はやだよ…!!大瀬さんに負担掛けたり嫌な思いさせたりするなんて絶対にいやだからね…!!」
(コ イ ツ 等 ぜ っ て ぇ 今 か ら セ ッ ク ス す る じ ゃ ね え か ! ! ! ! ! )
猿川は今からセックスをしようとしている幼馴染みと一歳年下の青年に深く絶望した。
(嘘だろいお……、お前子供の時はあんなに純粋だったじゃねえか…。
それに大瀬………!いっつもいおと仲悪そうにしてたのは何だったんだよ?俺たちに関係がバレないようにわざと演じてたっていうのかよ………?
なんだよお前らカップルY◯uTuberかよ!!!)
猿川は、依央利の大瀬の情事中の音を聞くことに絶えられないので、ズボンのポケットに入っていたワイヤレスイヤホンを両耳にさし、そして再びテーブルに突っ伏した。
(いお、テメェのことだから心配ねぇだろうけどぜってぇゴムはしろよな。二人仲良く性病なんかにかかるんじゃねえぞ…!)
猿川は、ミュージックアプリを開き、お気に入りのバンドの曲を流そうとした……、その時だった。
「いおくんがもし僕に勝ったら、捺印………してあげる。」
「っ……!!!」
「絶対に、勝てないだろうけど…。」
「……………。
ふふ……あはは………。大瀬さん、煽ってくれるねぇ…?
……いいよ?『捺印』、本当にしてくれるんだね?」
「………勝ったらね。」
「僕が好きなようにやっちゃったら、大瀬さん気持ち良くなれないかもよ?」
「……いいよ。負けないから。」
(コイツ等ぜってぇ今から激しいセックスするじゃねえか!!!!)
猿川は静かに涙を流した。
何故自分は、こんなところで眠ってしまったのだろうか。何故自分は生々しいコイツ等の情事前の会話を聞かされなければならないのだろうか?
「あ、でも猿ちゃんあっちで寝てるから(ゲーム音)静かめにしよっか。」
(馬鹿野郎!!!変なタイミングで気ぃ使うんじゃねえ!!!こっちはもう散々クソみたいな会話聞いちゃってんだよ!!!)
「あ、猿川さん、イヤホン付けたまま寝てるよ…。」
「あー、もし音楽流しっぱだったら耳悪くしちゃうよ〜。でも注意したら猿ちゃん反発しちゃうしなぁ〜…」
(ふざけるんじゃねえ!!!お前らの会話が気になりすぎて音楽なんか聞いてられっかよ馬鹿野郎!!!)
(もうここまで来たらテメェらのセックス、見届けてやるぜ
……!!!!)
「いおくん何使う?」
「ワ◯イージのは◯ちゃんバギー。」