死神のおよめさん スティーブンには、一人の死神が取り憑いている。それを他人に話したことはない。話したところで厨二病っぽい思い込みか戦闘のPTSDによる精神異常を疑われるだけだ。
はじめてその死神に出会ったのはもうずいぶんと前になる。十代のころはじめて実戦に出るようになり、まだ片手で足りるほどの経験しか積んでいなかった頃だ。
若さゆえのヘマをして、スティーブンは一人廃屋の片隅で死にかけていた。
暗い廃屋の中、わずかに破れ窓の隙間から月明かりだけが零れる。その青い光の中に、いつのまにか黒いローブを纏った幼い子供がいた。
眷属は倒したはずだ。グールか、それとも幸運な生存者か。
スティーブンの体から流れた血は多く、床を濡らしている。グールならこれを媒体に大技の一つも出せば簡単に倒すことができるだろう。そしてついでに、スティーブンも死ぬ。
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