またあいつらか。慌てて廊下を駆けていく男子生徒とすれ違いながら、怪異の少年は着流した肩を竦める。駆けてきた方に目を遣るといがみ合う眼鏡の青年と子狐。廊下で見かける諍いに鬼の怪異は覚えがあった。
支離滅裂な責めを吐く口と、それを諌めるように唸り続ける光景を何度目撃しただろう。異界に焦がれる暗い眼窩は空っぽ、対面していても常軌を逸した目は狐を見ていない。人間なのはもはや外身だけ。危険な怪異から人を逃そうとする狐より、こっちの方がよほど怪異に近い。
「祭りのむこうにある窓を開けて、真理が手を振ってる。両手を広げて僕を呼ぶんだ、ほら、✕✕✕って声が聞こえるだろ? あれは○▽っていう単語の欠片なんだ、だから邪魔しないでくれよ。邪魔? 僕は邪魔なんかじゃない、異界にお前なんかいらない……未知の謎だけで……」
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