どっちがいい? カンカン照りの空の下、音之進はドディオン・ブートンのアクセルを思い切り吹かした。ドルンドルンと重く空吹かしになり、舌打ちする。やっぱり少しでも上り坂になると動きが悪い。父上に言えば調整してくれるだろうか……いや、忙しいと一喝されておしまいだろう。それすらもされないかもしれない。悪くすれば取り上げられるかも……思えば、父の顔もこの数日見ていなかった。
ふんと鼻息荒く、更に吹かす。音之進の気合が乗り移ったか、ドルンッと強く反応した。今のうちだ。体重を前に掛け、勢いをつけた。ドディオンは音之進の意志のまま、加速した。
その瞬間、目の前を人影が横切る。あっと思った時には遅かった。跳ね飛ばされた人間が、ぐるん! と大きく回転した。
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