毎日SS8/13それまで、どうやって人と接してきたのか思い出せない。どこに行っても、スケートという共通点があったし、そのことならすらすらと口が回る。
会話のきっかけを掴めないまま、距離を計れないまま、気付いたら孤立していた。『事故でフィギュアスケートを辞めた元選手のアスリート』というクラスメイトは、腫れ物に過ぎない。
もともと、学校に友人らしい友人はいなかった。ケイゴの周りにいるのは、自分のせいで大怪我をした母親と、会ったことのない、もう一人の自分。
変わりたい、という気持ちはあった。高校は、同級生が少なさそうな場所を選んだ。
競技を辞めてから、髪の毛が伸びた。一度足が遠のけば、美容院に行く勇気も出ない。長い前髪はそのまま、伸びた襟足を染めた。
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