どこにもいかないで吾の元へ 帰りますよう 祈りつつ おまじないにと 蛙を託す
詠み人知らず
くい、と呼び止めるように上衣の裾を背後から引っ張られた。サカキの気を引こうと幼い頃、シルバーもそうしていたなと思い出し、振り返るとそこにはレッドが居た。
「ん」
メッソン柄のマスキングテープが、斜めに貼られた包み紙を、彼はサカキの胸元に突き出した。ぐいぐいと押し付けてくる様子から察するに、サカキに渡す物らしい。相変わらず、肝心な時には言葉数の少ない男だと、サカキはそれを受け取った。サカキが受け取ったので、レッドの顔つきがようやく柔らぐ。
「何なんだ、これは」
マスキングテープをゆっくりと剥がしながら、サカキは彼に訊いた。包み紙を筒状にして中身を確かめると、ポリゴンフォン用の根付けらしい。蓮の葉にメッソンがちょこんと腰掛けているチャームがあしらわれていた。
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