バイク屋になるんだと思ってた。見習いから始めるのだと、照れ臭そうに笑った油まみれの洗いざらしのツナギ姿が似合ってた。
バイクが好きで、乗り回すのが好きで、いじるのが好きで。始めたばかりの見習いのくせに、いつか自分の店を開くんだって、遊びに来いよって言ったのに。
真ちゃんのツナギ姿を最後に見たのはいつだっただろう。
病院の通用口から現れた真ちゃんは酷く疲れた顔をしていた。伸ばしっぱなしの前髪が伏せた目元を覆う。オレンジ色に照らす日差しから目を背けるようにうつむいた横顔が、少し痩せたように見えた。
歩く前を遮るように車を乗り付け、立止まった真ちゃんに向かって窓を開ける。
「乗んない?メシ、食いに行こーよ」
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