Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    mayamayappp

    @mayamayappp

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🐡 🍋 🍊 🌻
    POIPOI 189

    mayamayappp

    ☆quiet follow

    DT🦊とウワテな🍊の話(※かっこいい🦊はいません)

    DT宮侑の葛藤「侑さん、この後うち来ませんか?」
    「ヒョエッ?!」
    変な声、出てもた。やって、長年の片想いの相手が!家に来ませんかって!!俺がいつから君に心奪われているか知っとる?そう、あれはうん年前の春高…って、んな語りはいらんねん!
    感動と驚きの再会から1ヶ月、練習後のロッカールームまでの道のりで突然投げられた超特大の爆弾に平静を保てるはずもなかった。燃えあがった炎に俺の太陽は容赦なく油を注ぐ。
    「明日お休みですし、泊まっていただいても大丈夫です」
    「ングゥエッ?!」
    泊ま…トマ?!
    「でも、難しければ今の話はなかったことn」
    「ハイ!行きます!ゼヒ泊まらせてください!!」
    脳みその情報処理が追いついてないけど、ここが逃しちゃあかんところなんは間違いない!
    返事はハイ!しかないやろ!Yes!!
    「あ、用件伝え忘れてましたね。実は欧州リーグの最ッ高に熱い試合のフル動画手に入れたんです!その中にぜひ侑さんとやってみたいコンビネーションプレーがあって!よかったら一緒に見たいなって!」
    屈託のない笑顔とキラッキラの瞳でこんなこと言われて断れるやつおんの?
    「ハイ!よろこんでー!!」
    居酒屋店員か!!ってくらいデカい声出たわ!
    「フフ、じゃあお互い支度が終わったらロビーで待ち合わせで!」
    会話を終えて別れてからクールなミヤアツム先輩を演じ忘れていたことに気がついてもた。でもまあ俺の秘めたる思いには気付かれずに済んだはずや…これから慎重に、じわじわと距離詰めてくねん…
    誘いの理由がバレー関係であったことにホッとしつつ、コンビプレーの相手に俺を指名してくれたことにうかれつつ、当たり前ながらそういう理由でないことにちょっぴりがっかりしつつ…
    熱がこもる一方のこの頭を冷やすため、シャワールームへ直行した。


    濡れた髪から雫が伝う。冷や水てっぺんからかぶってみたけども、落ち着くはずもない。積もり積もった恋心を自らぶつけるより先に、突然のお泊まりが決まってしもたんやから。
    超イケメンで全国レベルのスポーツマン、昔から当然モテはしたものの恋愛には全く興味がなくバレー一筋だった俺が、あの日君に瞳と心を奪われた。やから、君以外の人と寝ることはおろか、付き合ったことさえなくここまで来てしまった。
    今も変わらずモテるんで根も葉もない浮いた話は流れるけども、勝手にどっかの女が連絡先渡してきたりベタベタしてきたりしとるだけ。まあ、めんどいから否定もせんけどな。
    で、いつやて?今夜?この後、そのまま?職業柄着替えはジャージも下着もロッカーにストックしてるんで助かったけども、“はじめてのおとまり”に勝負下着を準備する暇もない(そもそもそういう関係ではないので、杞憂やな…涙)。
    え、ちょっと待て、泊まりってことはシャワーも翔陽くんちで借りるってこと?あ、でも今浴びたから省略?ベッドは?いやさすがに俺は床、よくてソファか来客布団やろ!落ち着けミヤアツム!!
    「なあ、ツムツム、さっきからビショビショのまま着替えもせずにブツブツ何言ってんの?赤くなったり青くなったりしてるし、具合悪いんじゃない?」
    「ギャーーー!!!!」
    ギョロッと猛禽類の目が鼻の先に現れる。ぼぼぼぼぼっくん!!心臓に悪いわ!いつからそこに居ったん?!居るなら居るって言うて!!
    「大丈夫そうだな、よかった!まあ明日オフだしな!楽しめよ!!じゃ、おさき!!」
    何から言い訳するか考えていると、ニカッと笑い、意味深な言葉を残してバシッと俺の背中を叩き去って行った。
    俺どこまで口に出してしまってたん?ぼっくんどこまで分かってしもた?野生の勘?
    ブルッと身震いしたが、ジンジンとする背中の痛みに感謝し、我を取り戻して「お泊まり会」の準備を再開した。


    「あ、ここです」
    そう言って案内されたのは、高く聳え立つ…タワーマンション?!
    オフに2人きりで歩くのも初めてで、ドキドキしながらここまで翔陽くんについて来た。緊張でベラベラ喋ってしまった気がするけど、何も覚えとらん。何話したんやっけ。翔陽くんがたくさん笑ってくれてたのは覚えとる。なんともないただの夜の街さえキラキラ輝いて楽園のようやった。俺、幸せや。今日死んでもええ…いや、あかん、まだや。
    そんで、たどり着いたんが、ココ。高級感を纏い煌めくロビーを抜け、静かで異様なエレベーター特有の浮遊感に包まれて高層階へ誘われる。
    「翔陽くんって、大地主のおぼっちゃまなんです…?」
    「ハハッ!違いますよ。俺の親友…今はそれだけじゃないけど…、そいつが大阪に住むことになった俺を心配して、せめてセキュリティしっかりしてこる部屋に住んで!っつってこの部屋選んで借りてくれてるんです。ブラジル帰りなのに心配しすぎですよね!1ヶ月経った今も部屋ばっか立派すぎて全然慣れないんですけどね。」
    そう言って困ったように少し眉を下げて笑う君。ああ、好き。
    …って、太すぎんその親友?!翔陽くんナニモン?親友ナニモン?親友、翔陽くんのことただの親友思うとらんよな?!
    “ピッ”
    独り焦る俺を取り残し、タッチレスキーの動作音が鳴る。
    「何もない部屋ですけど、どうぞ。」
    開かれた扉に誘われて中に入る。あちこち眺めながら靴を脱ぎ、いつもならホイッと脱ぎ捨てる靴を今日ばかりは綺麗に揃えた。
    初めてお邪魔する翔陽くんの部屋は、広くて、家具や物が最小限で、翔陽くんの匂いが、気配が、した。
    翔陽くん、ここに住んどるんや…
    「俺1人で暮らすには広すぎるんですよね。よかったら一緒に住みますか?」
    そう言ってニコッと笑ってキッチンへ消えた。
    冗談のタチが悪すぎるやろ!好きな子に誘われてホイホイ付いてきてしまったが、心臓が最後までもつ気がせん…無事に帰ることができるのか…


    泊まりの目的である動画は寝る前に見ることとなった。食べる時は食べることに、バレーを見る時はバレーに集中したいからとのこと。そういうところ、むっちゃ共感する。
    夕飯は出前のピザと翔陽くん特製鯖サラダ(うっま!!)と少しのアルコール。食事のときの会話の内容も全部バレー関連!プレーのこと、チームのこと、高校時代のバレー部のメンバーのこと…盛り上がって話が止まらんかった!いつまでも話しておれる。君のコロコロ変わる表情、輝く瞳、カラカラと転がる笑い声、こんな特等席で独り占めできるなんて夢のようやった。君と居る時間は全部、最高に幸せや。
    食事を終え、二人一緒に皿を片付け、ほろ酔い気分でソファで寛いでいた俺に翔陽くんが問いかけた。
    「侑さん、シャワー浴びます?」
    シャ、シャワー
    「俺は、練習後も浴びましたけどもう一回浴びとこうかなって。侑さんももし使うなら先にどうぞ!」
    「お、お、おん、ありがとう」
    どうぞと言われ、とっさに返す。分かっとる。彼の言葉に別に他意はない。分かっとるんやけどね。
    風呂もでかかった。今日はさすがにお湯は張っとらんけども、普段は湯船にも入っとるんかな…あれなら男2人で入っても大丈夫そうやん…変に想像してしまってものっそい恥ずかしくなり、本日2度目の冷水シャワーを浴びた。


    革張りの長く伸びたソファに座り、シャワーからから戻る君を待つ。俺が先に風呂場を借りているうちに照明は間接照明に切り替わっていて、あたたかな光が灯り、なんともムーディーになっとった。ジャージ姿の自分がムードとチグハグで耐えられず左右の膝をくっつけて無意識に小さくなった。
    「お待たせしましたー!!」
    ほかほかと湯気をまとって現れたのは、やわらかなスウェット生地のルームウェアの翔陽くん…!!
    長年の推しのオフ姿に感動して泣きそうになるのを堪えて手で口を覆い、普通の顔(?)で言う。
    「おかえり」
    ……固っっ!!(自分ツッコミ)
    途端、フワッと世界が揺れる。俺の隣に翔陽くんが腰掛けソファが揺れたのだ。空気の流れと共に石鹸の香りが立った。
    …近すぎん?自分の心臓がめちゃめちゃうるさいのやけど!!
    袖と袖が触れそうで触れない位置取りで翔陽くんは話し始めた。
    「あの、なかなかお礼を言う機会がなかったんですが…入団してから1ヶ月、本当にありがとうございました!
    感謝の気持ちを込めて、動画鑑賞の前に、よかったら…ハンドマッサージさせてください!!」
    「ハ、ハンドマッサージ?!」
    突拍子もない提案に声が裏返る。俺の様子など気に留めず、俺の両手を取って、隣同士に座ったまま向き合った。
    「できればオイルを使いたいんですが、いいですか?」
    喋ることもままならず流され続ける俺を置いてけぼりに、翔陽くんは俺の両手を自分の腿に置いた。ポケットから小さな瓶を取り出しオイルを手に取る。とろみがある液体が間接照明でつやりと光り、リラックス効果のありそうなハーブの香りがふわりと立った。俺の右手に翔陽くんの両手で塗り広げられていく。多すぎるように見えた液体は馴染むようにじっくりと塗り込まれ、全体に行き渡った頃、右手が温もりに包み込まれた。翔陽くんの両手に挟まれとった。やわこくて、あたたかい…安心してまう…
    「侑さんの手、掌も指も俺のより大きくてしっかりしてる。この指がボールを、チームを、俺を、支えてくれているんですね。…いつも最高のトスをありがとうございます」
    翔陽くんは目を閉じて優しくささやき、手にキュッと力を込めた。あかん、キュン死する…なんぼでも上げたるよぉ…

    「じゃ、始めますね。痛かったら言ってください。」
    親指の付け根の膨らみをぐっぐっと何度か揉まれた後、手首を支えられた状態で、指の付け根からグーッと爪の先へ引っ張られる。オイルの滑りがなんとも気持ちいい。何度か同じ指を絞るように捻りながら引っ張り、隣の指へと施術を移していく。爪周りを縦に横に少し強めに刺激され、指先の血行がみるみる良くなるのを感じる。ああ、めっちゃ気持ちええ。

    しかし、これが普通のマッサージ店とちゃうのは、うん年越しの片想いの相手が、俺のためにやってくれとるっちゅうこと。ただの気持ちいいじゃ済まなくなりそうな状態に脳内が警報を鳴らす。勝手に湧き上がる欲を、弱りつつある理性総出でいなそうとする。頼むから!今だけは大人しくしとってくれ!一生のお願いや!!変な声が出そうになるのも、無知で無邪気なムスコが頭をもたげそうになるのも必死で抑え、全力で涼しい顔をする。汗、出てきた…

    静けさの中、親指の付け根と小指の付け根を交互にリズミカルに揉みながら、翔陽くんは話し始めた。
    「高校の時…影山が手や指のケアを大事にしているのを見て、試合じゃないそういうところから負けてるってのが悔しくて、それから爪の手入れや手の保湿にも気をつけるようになりました。ブラジルにいるときにハンドマッサージも独学で学んだんです。」
    飛雄くんの名前が出た途端、反射的に嫉妬して頭が冷えた自分に気づく。くそ!小さい男は嫌われんで!もちろんそんな俺のチッサな感情のブレなんて知ったこっちゃなく、翔陽くんは手と口を動かし続ける。
    「ハンドマッサージって、自分にも、周りの人にもできますしね。いつか、大切な人を労ってあげたいと思いながら勉強してました。」
    …ん?今なんて?いや、俺は一般的な「周りの人」枠やな、うん。(と言い聞かせながら、心臓バコバコですけど!翔陽くんの「大切な人」って誰なんですか?!侑さんにもワンチャンあるんでしょうか?!)とっさに相手の表情から真意を読み取ろうとしたけれど、顔を下に向けたままで、部屋も暗くてようわからん。どうなん?!
    そこからはあまり会話はなかった。手指が解されたことで全身の血の巡りがよくなり、心地よい刺激の波に思考が溶け、愛が満ちていくのを感じた。


    「終わりました。よかったですか?」
    言葉と共に顔が上がり、太陽の光を集めたオレンジ色の宝石が真っ直ぐにこちらを向いた。なんて綺麗なんやろ、目を離せない。ああ、

    「好きや」

    溢れてしまった。身体も心も揉み解されて、理性が仕事をせんかった。目の前のもともと大きな瞳がさらに大きくまるくなる。もう戻れない。
    「あの日春高で飛ぶ君に心奪われて、それからずっと他に目もくれず、君だけに恋をしてきた。
    ちゃんと準備してから告白しようと思っとったんやけど…出てしまった…」
    君は大きく開かれていた瞳の緊張が少し緩み、少し眉を下げて笑った。そして瞳が真っ直ぐこちらを向いた。

    「俺もです。俺、侑さんが、好きです。」

    うそ、え、ほんまに?
    「伝えるつもりはなかったんです。バレーに全てを捧げると決めた日、もう恋愛はしないと決めた。俺の一番はこの先もずっとバレーボール。恋をしても、仮に付き合えたとしても、その相手を一番にすることはできない。辛いだけ。
    でも、好きになってしまった。だから告白をするつもりはなかったんです。チームメイトとして近くに居られる間だけでも仲良くなれたらいいなと思って、今日は声をかけました。
    なのに…侑さん、反則です…困ったことに、嬉しいです…」
    眉尻を下げた赤い顔、可愛すぎて死んでまう…いや、でも言わなあかんことがある。ソファを立って翔陽くんの前にしゃがみ、瞳を捉える。
    「翔陽くん、勘違いしとんで?俺は「バレーボールが一番!」の翔陽くんに恋したんであって、そこを曲げて俺を見てほしいなんてかけらも思ってない。俺かてバレーボールが一番なのは一緒やし。バレーにかける気持ちは負ける気はない。今後お互いチーム移籍の話かてあるやろし、物理的な距離が近いのは今だけかもしれん。俺はそれでもええよ。君の人生、俺の人生、目一杯燥ぐのが最優先や。お互い世界のどこにいてもキラッキラに輝いて、心の一番近いところで一緒に歩めたのなら、それ以上の幸せはない。付き合い方についてはこれから一緒に考えよ。」
    すぅっと息を吸う。改めまして、

    「好きです、俺と付き合うてください。」

    「…はい。」

    「ヨッシャアアアアアアアア!!!!!!」
    「グヴッッ!!づざんぐ、るじ!!」

    歓喜の叫びと共に全力でハグしてしまった!!しゃあないやん!!ええよな!恋人やし!!夢なら覚めるなや?!
    腕の力を緩めると翔陽くんはまた俺の瞳を真っ直ぐ射た。ああ、この眼差しに絆されたのだ。

    「…これから、よろしくお願いしますね。」
    視界が暗くなったかと思うと、唇に温くてやわこいものがふわりと触れた。こ、これが、キス!?本能がもっと欲しいと暴れたが、抱き寄せるより相手がするりと腕から抜けるのが速かった。そして、少し離れた場所のドアノブに手を掛けながらこちらを見た。

    「この家、ベッドも一人で寝るには大きすぎるんです…待ってますね。」

    ?!?!?!
    「しょ、翔陽くん、お、欧州リーグの試合は…?」
    「コウジツです」
    明日観ましょう。テンパった俺の咄嗟の問いに、悪戯な顔で静かに答え、扉の奥へ消えて行った。

    とんでもないバケモンに魅入られてもうた。君にはきっと一生敵わん。

    過去の自分にこれだけは伝えたい。恋をしたらロッカーに勝負パンツを入れておけ、と。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖👏👏😍💖💖💖💖💖🌋💙🌋🌋🌋
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works