食人罪、という耳慣れない罪状を知り得る者は果たしてどれだけ存在するのか。運ばれてくる患者の症状を見れば、その罪状が脳裏をよぎるのは然り。
ひとつ。全身に点在する咬み傷。人間の歯は肉を切り裂くことに長けている訳ではないため、引き千切る、という表現が正しいだろう。
ふたつ。性的暴行の跡。食人に走る人物の共通点として、人を喰らう行為そのものに抱くエクスタシー故か、これも症状に顕著である。幼い少女が被害者だった場合は悲惨なものだ。子宮破裂による摘出も、珍しい話ではない。ただ、男性が被害者の場合も少なくはないため、これだけでは犯人の性別特定に至らない。
みっつ。執拗なまでに粘膜を刺激されたような痕跡。口腔、膣、直腸、眼球、触れることが可能である粘膜に対する異常なまでの執着が伺える。舐める、触れる等により赤く擦れているものが大半だ。
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