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    小春(刀)

    @koharu_sword

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    小春(刀)

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    途中までです。
    刀剣破壊、転生、現代遠征、というワードが出てきます。
    俺得シチュ詰め込んだので上記ワードを使った上で、思ってたんと違う、コレジャナイ感も多分に含みます。
    これだけ詰め込んだので、誰にも配慮していません。というか、出来ていませんのでご注意ください。

    #にゃんちょぎ
    cats-eye

    転生もの。その時は唐突に訪れた。

    【タイトル未定】

    ぱき、と思いの外軽い音だったような気がするし、全身に響く音だったような気もする。
    誰かが叫んだ。
    自分かもしれなかった。
    白い光に包まれ、その意識は途絶える。


    一隊六振りで構成された面々は皆どこかしらに怪我をして、ギリギリの状態で進軍をしていた。
    不意を突いて出てきた遡行軍と対峙し、最初に折れたのは隊長で先陣を切っていた南泉一文字、そしてその次に折れたのが南泉の少し後を追っていた山姥切長義。
    呆気ないものだった。
    二振りが致命傷を負い、その後少しの間だけ意識があったらしい。
    倒れた南泉のところに崩れるように長義が倒れ、少し言葉を交わした。
    「敵討ち、してやったよ」少し笑った長義に、同じように笑った南泉は「ばーか」と言っていた、そう語ったのはすぐに駆け寄った短刀だった。
    そして、隊の編成だが折れた打刀二振りの他は、脇差と短刀しか居らず、不意を突かれたとはいえ長義が一振り倒し、元々の敵数が少なかったことも功を奏した為、こうして報告が出来る状態なのだが、不思議なことが起きた。
    まず、この隊は出陣時に刀剣崩壊を防ぐ御守りを渡されていて、それ自体は正常に発動している。
    脇差と短刀では打刀を連れて帰るのは体格差でかなり困難なのだが、どういうわけか折れた二振りは顕現が解除され、ただの刀となっていた。
    折れる寸前、といった状態の打刀が二振り、彼らが倒れていた場所に寄り添うようにあった、というのが目撃者である隊に配属された者達の報告で、それ以上は何も分からない。

    はあ、と近侍を務めていたへし切長谷部は頭を抱えた。
    奇妙な現象と、仲間が折れて元に戻っていないという状況に、常に煩い本丸の中は暗いのだが、この本丸の初期刀で長義の写しである山姥切国広が異常に取り乱していた。
    彼の兄弟刀二振りが度々宥めているが、とてもではないが戦場に送り出せる状態になく、長谷部はそれを含めて本丸に常駐していない主である審神者に報告をした。
    話を聞いた審神者はすぐに本丸へ来て、手入れを済ませても顕現しない南泉と長義の本体を調べ、翌朝さほど広くない審神者の執務室へ数振りを呼んだ。
    朝日が差し込み、外からは鳥の鳴き声が聞こえる。
    上座に座した審神者の左側には、件の打刀が二振り置いてあり、右側の隅に近侍の長谷部が座っていた。
    対面する審神者に一番近い場所には初期刀の国広が、その後ろに長義の刀工と同じ系譜の燭台切光忠、隣には長義と南泉と所蔵元が同じで古株の鯰尾藤四郎、そして南泉と刀派を同じとする山鳥毛が座り、全員戦装束で神妙な面持ちをしている。
    一番憔悴しているのは国広で、見ていて痛ましいほどだった。

    「主・・・本歌は・・・南泉は・・・・・・どう、なってるんだ」

    呟くような声だったが、発した国広の声は朝の澄んだ空気によく響いた。
    背中を丸め、正座をした膝の上の手を強く握っている。
    背後から燭台切が身を乗り出して、その背中を摩った。
    目を閉じじっとする山鳥毛、真っ直ぐに見つめる鯰尾、眉根を寄せる燭台切、俯く国広、それぞれを見つめた審神者の口から出た答えは、分からない、だった。
    勢い良く顔を上げた国広は、今にも泣きそうに目を細め、眉間に皺を寄せている。
    何か言いたそうに口を歪めるが、それは国広自身が後悔するような、どうしようもない恨み言であり、主の刀としての矜恃で音にすることは無かった。

    「小鳥よ・・・うちの子猫と山姥切の本歌が、どういった状態なのか分からない、ということを知らせる為に我々を集めたのか?」

    打って変わって冷静に言葉を紡ぐ山鳥毛だが、その燃えるような色の目は強いものだった。
    静かに首を横に振った審神者は、傍らに置いていた二振りの打刀を自分の正面へ持ってきて、ひとつずつ分かったことを話していく。
    まず、御守りは正しく機能し、本体が手元にあることから、破壊は免れている。
    但し、本体である刀に付喪神の彼らが戻ってきていない。
    「それって、空っぽってことですか?」刀を指差した鯰尾が問えば、審神者は頷いた。
    本来、破壊されたら彼らは本霊に戻り、手元には何も残らない。
    そして御守りが発動して破壊を免れたなら、重傷状態で顕現したままとなるのが通例だった。
    審神者は語りながら目の前の長義と南泉の本体を、半分くらいまで丁重に鞘から抜いた。
    現存する刀は、当然長い歴史を経ている為、錆や傷、欠けなどがあるが、戦う為に励起された刀は当然全盛期の姿で現れる。
    しかし、両方とも一部欠けていた。

    「ということは、欠けた部分も主の霊力なんだから、それを辿ることが出来れば・・・」

    少し明るい顔をした燭台切だったが、視界の端で長谷部が難しい顔をしているのを見て、僅かに顔を顰めた。
    そっと抜いていた刀身を鞘に収めた審神者は、燭台切の言葉を補うように、欠けた部分は辿ることが出来た、と続け、鯰尾が感嘆の声を上げる。
    不審な欠けを見つけ、霊力を辿ると、そこは彼らが一度果てた戦場では無く、そこから遥かに時間を進めた現代日本だった。
    一同が首を傾げる。
    審神者は少し言い澱み、それからこの刀にあった二振りの魂は、現代日本で転生していると告げた。
    それも居場所を特定出来たのは南泉のみ、長義は近くに気配があるだけで何処にいるかまで分からなかったと言う。

    「でも現代なら、さっさと連れ戻せるんじゃないですか?」

    鯰尾の発言に、審神者が目を伏せた。
    言葉を選ぶように、はくはくと唇を動かし、僅かに息を吸って言葉を待つ全員の顔を見ると口を開いた。
    まず、現代日本というのは審神者が生活をしている場所と異なること。
    多様の可能性を紙撚って一本の糸のようにしたものを過去とするなら、そこから飛び出た糸屑のようなもの、そこに彼らが居る。
    刀剣男士という付喪神が還る場所は本霊であり、分霊を宿した子供というのは産まれてくるはずもなく、存在しえない歪んだ歴史に紛れ込んだのだと、現時点で結論付けた。
    刀剣男士ではなく、ただの人の子として生を受けている。
    何年の何月何日、といった歴史の転換期など無い状態であり、大きな振り幅のあるその地へ行って調査しないことには、彼らの様子も何も分かったものではなかった。
    だからこそ国広の最初の質問であった「どうなっているか」ということには、「分からない」という答えになる。

    「俺の訊き方が、悪かった・・・ということか」

    自嘲しながら顔を片手で押さえ、肩を震わせて「消えてない、良かった」と国広が吐息混じりに呟いた。

    「主・・・そろそろ」

    凡その現状説明が終わったところで、恭しく長谷部が審神者に声を掛けた。

    「え、帰っちゃうの?」

    少し驚いたように燭台切が隻眼を見開くと、長谷部は呆れたように息を吐く。

    「今回の件は緊急でお呼び立てしたのだ。それも二振りの手入れから奇妙な現象について調べ、一睡もされていない。兼業されていることを忘れるな。それと今の話を含めた指示は俺が全て聞いている」

    後のことはお任せ下さい、長谷部が頭を下げると、少しでも困ったことが起きたら連絡するように伝え、審神者は部屋を出て、隣室で控えていた五虎退と共に現世へ帰る支度をしに行った。

    「それで、俺達が現代に調査に行くってことで良いんですか?」

    「そうなる・・・が、なにせ情報が少ない。現地と本丸の時間の進み方の差も分からん。場合によっては長期任務になることを主は懸念していた。というのも・・・」

    鯰尾が早速足を崩し、頭の後ろで手を組みながら長谷部に問えば、その態度の軽さに咳払いをしながらも、全員に大前提を伝え、一度言葉を切った。
    そして、じっと端に控えていた山鳥毛をちらりと見る。

    「欠片から探知出来た南泉だが・・・主はその魂を呼び寄せようとした。そして出来なかったんだ」

    「それは、何故だ?」

    静かに、ただ促すように言っただけだが、山鳥毛の言葉に少し気圧された長谷部は、改めて姿勢を正した。

    「刀剣男士として分霊に戻るには魂が未成熟・・・人の子として転生した南泉は、まだほんの子供のようだ」


    ***

    20××年、I県。
    通常の時間遡行とは異なり、文明の発達した現代。
    必要な物を揃え、国広を隊長に燭台切、山鳥毛、鯰尾の四振りが派遣された。
    審神者が政府に掛け合い、任務に関する費用や、現代遠征に対する行動制限に関してかなりの優遇を勝ち取った。

    「ふーむ、不謹慎ですが・・・何だかこういうのって少し楽しいですね」

    くすっと少し笑った鯰尾に、柔和な笑みで返した燭台切は持っていた袋をテーブルの上に置いた。

    「そうだね。でも、長期戦になりそうだから、ちゃんとした拠点の確保も考えた方が良いかもね」

    ガサガサと袋の中から取り出したのはスーパーで売っている弁当と、いくつかの惣菜、飲み物だった。
    四振りはそれらを適当に手に取り、静かな夕食を始める。
    普段行う遠征や、出陣であれば、旅籠に泊まるか野宿なのだが、現代で長期逗留となると複数名居る場合の言い訳が難しく、野宿が出来る場所というのも少ないことから、一先ず一週間の滞在でホテルを二部屋借りた。
    簡単な身元を証明するものは審神者経由で一式用意してもらっており、それぞれ燭台切と山鳥毛の名義を使った。
    適当に腹が満たされ、時刻は二十時を過ぎている。

    「じゃあ、ここに来て分かったことを出していこうか」

    燭台切が食べ終わったゴミを一纏めにし、鯰尾がホテルに備え付けのお茶を用意した。
    目的地へやって来て、最初にしたのは地理の把握。
    そして燭台切と山鳥毛は泊まる場所の手配と、食事などの必要なものの調達へ行き、国広と鯰尾は審神者が気配を掴んだ南泉を探しに行った。

    「んじゃ俺からいきまーす。まず、主さん曰く子供って言われた南泉さんですが、俺達が見たのは中学生ってやつでした。年齢でいうと十四、五歳・・・お家はお金持ちで、学校も良家の子息が通う感じのところだったので、どちらも入り込むには警備が厳しいですね」

    「それから、本歌だが・・・気配はあるのに辿ることが出来ない。南泉が中学生なら、それに近い年齢だと思うんだが」

    明るく報告する鯰尾と、反対に国広の声は気落ちしている。
    じゃあ、と今度は燭台切が口を開いた。

    「僕達は、南泉くんの家周辺で少し聞き込みをしたよ。昔からある名家らしいね。でも、この土地の正史にそんな家は無いから・・・完全に歴史を逸脱してる。で、その家と親しくしてる家が少し離れた所にあるらしくって、そこも子供が居るみたいなんだよ」

    「近所の奥方達から聞いた噂話だが、どうもその子供は学び舎には通わず家に居るらしい。見目が良く、良家であることから誘拐などの事件が絶えないからだろうと言っていたな」

    山鳥毛が補足すると、鯰尾が「それ、長義さん確定じゃないです?」天井を見上げて呆れた声を出した。

    「今は小学五年生か六年生くらい・・・十一、二歳じゃないかって、近所の人は言ってたんだけど・・・でもそこまで成長してるなら、同じ系譜の僕や写しである国広くんに気配が辿れないっていうのが、引っ掛かるんだよ」

    「家から出なくても、気配くらいは分かりますよね・・・何か術とか掛かってるんですかね?」

    会話が途切れたところに、山鳥毛が「良いか?」と挙手をする。

    「一先ず休まないか?失礼を承知で言うが、山姥切の写しは精神的に相当参っているように見える。明日は子猫の監視をする者と、今日聞いた山姥切の本歌の家と思われるところへ行く者と分かれて、手掛かりを探すというのでどうだろうか」

    「そうだね・・・初日だし、これでも収穫はあった方だよ。国広くん、長義くん達のことがあってからあんまり寝てないよね?明日からは監視や聞き込みをしなきゃいけないから、ちゃんと休もう」

    国広が何か言いたげに口を開閉するが、出てきた言葉は「そうしよう」と彼らを肯定する言葉で、鯰尾が国広の腕を引いて、隣の部屋へとさっさと出ていった。



    「燭台切、少し聞いても良いだろうか」

    部屋に備え付けられている風呂を使い、寝支度を整え、それぞれベッドに入った暗い部屋の中、闇に溶けるように山鳥毛の声が響いた。
    何かな?と天井を見上げたまま、燭台切は返事をする。

    「私は顕現から日が浅い。今回の件は子猫が関わっているから、縁のある者として私も呼ばれたのだろう。だが、山姥切の本歌のことは殆ど知らない。子猫と所蔵元が同じで古馴染みであり、本件の隊長の本歌・・・隊長とはあまり親しくないようだ、というところだ」

    子猫も口ごもるのでな、と付け加えると、ふふふっと燭台切の息を吐くような笑い声が聞こえた。
    それから、そうだねぇと少し考えるように間を空け、ゆっくりと話し始めた。

    「長義くんはね、とっても良い子だよ。僕は長船の傍流って贔屓目もあるかもしれないけど、政府の監査官として本丸を評定する役目を単独で担うような、強くてしっかりした子だ。彼の言動は時に高慢に映るかもしれないけど、努力を怠らず己を律し、その上で本歌であることに誇りを持った結果だと思ってるよ」

    「周りからもよく頼られている姿を見る。小鳥の仕事も手伝っているとか」

    「うん、凄く優秀でね・・・畑仕事は苦手みたいだけど、それでも何かと気を回して手伝いを買って出てくれてる、よ」

    楽しそうに話していた燭台切の言葉が少し暗くなる。
    山鳥毛は言葉を待つように沈黙を守った。

    「もう少し・・・長義くんは我儘を言って良いと思うんだ。山姥切という名前の件も、最初に国広くんに感情をぶつけたきり、それ以上何も言わなくなった。僕達に山姥切と呼んで欲しいとも言わなかった。非番の日は誰かの手伝いや主の仕事をして・・・長義くんは、いつも自分の感情を二の次にしてて」

    「・・・名前の件は、多少子猫や子虎から聞いている。しかし、そうだな・・・確かに愛想は良いが、彼自身の喜怒哀楽というのは見ていないな」

    「綺麗な子だけど笑うと可愛いんだよ。少し悪戯っ子みたいな顔でね・・・長船なら大般若さんが笑わせたりしてるけど、やっぱり素に近い表情をしてるのは南泉くんと居る時かな。笑ったり怒ったりしてる。長義くんの緊張の糸を緩めてくれる場所なのかなって思うな」

    「そうか・・・いや、子猫も私が訊かないからか、山姥切の本歌のことは話さなくてな。どういった関係なのか、今回の一件でますます分からなくなったんだ」

    僅かに空気を揺らすように、燭台切は笑った。
    何となく山鳥毛の言わんとすることが分かり、「多分、今はそんな関係では無いと思うよ」とだけ言ってやんわり否定する。

    「喧嘩するほど何とやら、というやつかな。こうして顕現されるより前から、何百年も共に居たなら・・・それは刀派を超えて強い絆があるのかもしれないね。これからのことは分からないけどさ」

    「絆か・・・腐れ縁などと子猫は言っていたが、それもまた絆なのだな」

    時間にすれば僅かだが、山鳥毛は長義のことを少し知り、燭台切は思っていたことを口に出すことが出来て、互いに小さく笑うと布団を被り直し、任務に備えて眠りについた。

    翌朝、軽い朝食を胃の中に流し込んで、一日の動き方を決めた。
    まずは長義と南泉、それぞれに縁のある者で分かれ、偵察と状況を見て接触、記憶の励起が出来ないか試みることとした。

    「よろしく頼む、鯰尾藤四郎」

    「こちらこそ!」

    中学校に通う南泉の尾行は鯰尾と山鳥毛。

    「国広くん、長義くんのことは心配だけど・・・焦らず行こうね」

    「・・・ああ」

    昨日アタリをつけた家付近での偵察と聞き込みを国広と燭台切で行うこととなった。


    ***

    それなりに開けてはいるが、地元住民は田舎だとボヤくような都市の一角。
    買い物客や下校する学生が多くなる時間。
    少々高級な洋菓子店の前に、不釣り合いな男子中学生が立っている。
    この地域であれば名門校として有名な制服を着ているが、どこかやんちゃそうに見える少年は、かれこれ十分程ウロウロし、店に入るか否か悩んでいるような素振りだった。

    「どうしたの?」

    突如掛けられた声に、少年は分かりやすく肩を震わせ、勢い良く振り返った。
    そこには黒く長い髪を高く結い上げた、同い年くらいの少年が笑顔を見せている。

    「は?誰だお前・・・」

    上から下まで値踏みするように睨み付け、急に声を掛けられた少年は露骨に警戒していた。

    「ああ、ごめんごめん・・・俺さ、贈り物考えてたんですよ。そしたら同い年くらいの君が目についてね・・・誰かに贈り物?一人でこんな女の人ばっかりのとこに行くのって気が引けててさ、良かったら一緒に見て回りたいなって」

    笑顔の少年こと鯰尾は、訝しげに顔を顰める南泉少年に難なく近付いた。
    少し離れたところで待機していた山鳥毛が「君は息をするように方便が出てくるんだな」とイヤホン越しに小さく笑う。

    「んだよ、カノジョにプレゼントか?だったらオレは参考にならねーぜ?」

    「あはは、違いますよぉ。ちょっと落ち込んでる仲間にね。君こそ彼女さんへの贈り物じゃないんですか?」

    「あー・・・彼女ねぇ」

    南泉少年は歯に物が詰まったような顔をして、言葉を濁した。
    その場で深く追求せず、鯰尾は「取り敢えず見てみましょうよ」と持ち前の明るさと強引さで、南泉少年の警戒を解きつつ、一緒に店の中へ入っていった。


    「すみません、お待たせしました山鳥毛さん」

    辺りが薄暗くなる頃、店を出た鯰尾は南泉少年と別れ、向かいの喫茶店に居た山鳥毛に店の前から手を振って合図を出した。

    「凡そは把握した。戻って隊長達に報告しよう」

    インカムを外し、会計を済ませて合流するとその足で適当な食事を買い込んで、拠点としているホテルへと向かう。
    道すがら、南泉や長義とは現在の所蔵元を同じとする鯰尾に、これまでのこと、本丸でのことを山鳥毛は訊いていた。
    何となく昨夜燭台切にも訊いていた関係性のことも仄めかしてみたが、鯰尾は数人が振り返るくらいに大声で笑う。

    「そんなに、面白いことを訊いたか?」

    「いや、まぁ・・・お父さんには、そう見えるのかなって」

    ひーひーと、笑いが止まらない鯰尾は目に浮かべた涙を拭い、お父さん?と首を傾げる山鳥毛を見上げ、また笑った。

    「だって、例えばですよ?仮に恋仲だとするじゃないですか。で、山鳥毛さんのとこへ案外真面目な長義さんが行くんですよ?南泉くんとお付き合いしています!よろしくお願いしますって」

    「いや、私は・・・子猫の付き合いに口を出すつもりは・・・」

    「いやいやー、逆ならどうします?南泉さんが長義さんに手を出してたら?尾張では南泉さんの方が格上とも言えましたし、手付き?手篭め?こっちの方がありえるかもですよ?長義さんは南泉さん好みの美人ですからねぇ」

    「そう、なのか?それは・・・一文字一家の長として、燭台切を含めた長船の者に挨拶をして、子猫にはケジメをつけさせるさ」

    遂に立ち止まって、膝をバンバン叩きながら鯰尾の笑いは頂点に達した。
    冗談ですよ!とスーパーの袋をガサガサと揺らし、ケラケラと声を立てている。

    ……To be continued
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