貞子DX(貞子DXのあらすじ)
封印されていた呪いのビデオが流出し、一週間後に死ぬ呪いから、二十四時間後に死ぬ呪いに進化した貞子ウィルス。ウィルスに感染すると、白い服を着た者が次第に近づいてくる。死から逃れる方法はひとつ。呪いのビデオを二十四時間以内に見て、死の期限を引き延ばしていくことだった。
「というわけで、オレたちも呪いのビデオを見よう」
「は? あたま沸いてんのか?」
九井の提案を乾は即答で却下した。封印されていたはずの貞子ウィルスが流出してから、半年が経過する。初期こそ死者が何人も出たらしいが、対処法が見つかった今は騒動も落ち着きを見せ始めている。
黒龍にも貞子ウィルスに感染した者がいる。死から逃れるためには、二十四時間以内にビデオ(通称「呪いのビデオ」と言われるため、便宜上ビデオと呼ばれることが多いが、今はほとんど動画での拡散である)を見なければならない。学校や職場でも感染者はビデオを見ることが認められているようになったため、わざと昼間に見る者が出ている始末だ。
黒龍の定期集会でのことだ。おずおずと挙手したものがいた。
「スイマセン、その時間はビデオを見なきゃいけない時間なんで、抗争に出られません……」
それを聞いた時の大寿の顔ときたら。
乾が失笑してしまったことで、九井が爆笑からの、芝大寿の暴走。怪我人が続出し、集会は混沌と化した。抗争はなんとか勝利を収められたものの、それ以来、黒龍では「貞子ウィルス厳禁命令」が出た。
あまりのバカバカしさに呆れるものの、呪いで死ぬというのは本当らしい。本日の死亡者に「ウィルス感染者」が出るようになった。月に数人程度だが、ゼロにはならない。これほど対策方法が拡散しているのに、死ぬやつがいることに驚くが、いちばんの理由は携帯の充電切れだというから、乾はあまり人のことは悪く言えない。乾は充電切れ常習犯だ。
説明が長くなったので話を元に戻す。
対処法が見つかっているとはいえ、呪いは呪いだ。白い服の人物が昼夜とわず襲い掛かってくる恐怖は耐えがたいらしい。感染してしまったものはしょうがないが、できるだけビデオを見ないようにと、政府からのお達しが毎日繰り返されている。
乾は政府の言うことを聞くようなお利巧な人間ではないが、わざわざ呪いにかかるメリットがない。
「それがさ、貞子のおかげで日本への旅行者が増えてんだよ」
「物好きがいるんだな」
「もちろんホラーマニアもいるけどね。その一方で、死んだ身内に会いたいってやつらもいる」
どういう意味だ。次を促すと、九井は躊躇いながらも口を開いた。
「白い服の人物は死んだ人間の姿をしていることが多いんだ。生きている人間の姿をしていることもあって、その場合は親兄弟、友人知人の姿をしているらしいな。その法則はランダムで、運が悪いと貞子に当たることもあるみたいだ」
さすがに貞子に襲われるのは怖いらしいぜ、と九井は言う。
だんだん話が見えてきた。つまり九井は死者に会いたいのだ。赤音に会いたいのだ。