Untitled 14 seconds mp4「うわ……いつの間にこんな容量圧迫してたの」
スマホ画面を見ながら吐き出されたアタシの独り言は、春もとうに過ぎ去ろうとしている新緑の季節の生温い空気の中で、直射日光を浴びたチョコレートみたいにゆるゆると溶けていった。
午前の授業も過ぎた学園の屋上。
今日は誰もいない。
建物に鋭角な影を形作る太陽の光。
遠くの方で聞こえる生徒たちの声。
寒くも暑くもない五月晴れの下で。
アタシは片膝つきながら、軽めの昼食を食べ終えた。
屋上は、どこまでも、穏やかだった。頬を撫でる風すらもささやかな衣擦れみたいな感触を残すだけだった。
日常のあわただしさや、過酷なレースのトレーニングの日程のスキマにぽっかり顔をのぞかせた、真空ポケットみたいな場所。
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