未定壊れたものは元に戻らない。
どんなものであっても多少の修理を施したとしても、元に戻ったとはいえない。それが脳であればどうだろう。
壊された脳は壊れたままで、記憶は戻らないのに、身体的には異常がない彼ら。戦争のない世界を彼らはこの先命が尽きるまで生きていかなければいけない。
それにどれほどの苦痛が伴うのか、分からないわけではない。記憶が曖昧な彼らが生きていくのに必要な幸福の記憶を、どれだけそれが非人道的であったとしても、やらないわけにはいかなかった。苦しみを抱えたまま過ごすことがどういうものか知っているから。
作られた記憶を移植する。やっていることはニタ研とほぼ同じ、その内容が違うだけ。
一人一人の生年月日や出身地に合わせてオーダーメイドの記憶を創造する。とてもセンシティブな情報を扱うのでひどく精神が疲弊する。強化人間に志願する子どもたちの多くは戦災孤児であったり家庭環境に問題があったりと、お世辞には幸福であったとは言いにくい。その彼ら彼女らの過去を一つずつ紐解いて、ありそうで本当は存在しない虚像をつくる。
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