「フィガロ、食事の誘いに来た」
俺とオズがアシストロイドを介さず、それもプライベートでよく話すようになってからどれくらい経っただろうか。オズは今日も俺の自宅兼簡易ラボに訪れていた。
「オズ……え、嘘。もう朝?」
「昼だ」
「ええ……」
閉めきった室内では時間の感覚も一気に狂う。この頃生活リズムが整ってきていい調子なので、今更崩したくはないと大人しくオズの手に引かれて立ち上がる。初めて手を握られたときは何事かと思ったが、どうやらアシストロイド依存症を和らげるためらしい。慣れてきたスキンシップにもう変な手汗は出なかった。
むしろオズの手は大きく温かくて安心するまである。仕事に集中している時は感じなかった眠気が一気に襲ってきて、不意に大きなあくびが出る。
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