世界の果ての話 非番の夜、眠りが浅かったのか夜中に目が覚めてしまった。午前三時四十分。あと少しで夜明けの匂いがしてくる頃。
眠らない街のあの喧騒も、ここでは遠い世界のことのように思えた。隣で小さく寝息を立てる彼の、心臓の鼓動が響いてきそうな、静かな夜の静かな家。
彼が滅多にこの家に帰らなかった理由が、今なら分かる。ここには機械音も人の気配も吸血鬼達の騒がしさも無くて、初めてきた時は静かで寂しい場所だと思った。だから、ここに来る時はなるべく彼と話すようにしている。
居間でレンタル映画を見て、テーブルで一緒にご飯を食べる。寝室では、会話にならなくても会話する。こうしてただ眠る時も、出来るだけ寄り添うようにする。
一人と一匹だけじゃないことを感じて欲しくて、俺は彼の領域に踏み込む。叱られたって構わない。叱ってくれることが嬉しいから。
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