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    hu_u_ko_tu

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    hu_u_ko_tu

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    RtFやブラジャニ聴くと泣けてきて、気持ちの整理する為に書いたポの妄想。🍭がブラジャニの心境に至るまでの話。きっと色々な葛藤があったんだろうなと思って書きました。

    #hpmi

    「乱数!」
    「乱数」
    鼓膜を震わせるのは、すっかり聞き慣れた声。好き勝手に呼ばれる自分の名前を聞くのが、俺は結構好きだ。何故なら、俺の名前を呼ぶ瞬間だけは、二人の時間を手に入れることが出来る。秘密の共有は出来なくても、そこに宿った感情によって、俺たち三人は仲間なのだと確認できる。
    幻太郎の声は陽だまりのような温もりを含んでいて、伸びやかで優しい。帝統の声は萌え出づる新芽のようで、生命力に溢れたしなやかさを持っている。
    それを聴く度に胸の奥がキュッと締め付けられるようになったのは、いつからだったろう。

    ーーあと何回、自分は彼らに名前を呼んでもらえるだろうか。

    毎朝目覚めると、心に浮かぶ疑問。
    二人に言えば怒られるのは分かっているから、口にしたことはない。けれど、絶えず降り積もるのは、澱のような想い。
    飴のストックはある。今のところ中央区からも逃げ延びている。
    だがそれは、永遠ではない。
    いつまで続ければ、どこまで行けば。
    噛みしめた唇からは、ここ最近ですっかり慣れてしまった血の味がした。


    ***


    「乱数、どこか具合でも悪いですか?」
    心配そうに問われ、ハッとした。慌てて視線をやれば、嘘は許さないとでも言いたげな目で幻太郎が自分を見ている。嘘はお前の十八番なのにと、何だか可笑しくなってクスリと笑みが零れた。
    「ううん、大丈夫だよ~」
    笑顔で返すと、ホッと表情を緩める幻太郎。クローンに狙われてからというもの、自分以上に過敏になっている気がする。
    「そんなに心配しなくても、ボクは大丈夫!飴だってまだあるんだし」
    わざとらしいくらいに軽く言ってのける。こんなことで幻太郎の心労が除けるなら、いくらだって道化を演じてやる心積もりだった。
    けれど、幻太郎の顔は思ったほど晴れない。ばかりか、却ってより一層憂いが募る。
    「小生が言っているのは、貴方の身体のことではありません。いえ、もちろん身体も心配ですが、それ以上に……」
    幻太郎はそこで言葉を切り、何度か躊躇いがちに視線を逸らす。やがて思い切ったように口を開いた。
    「乱数。貴方は一体、何を溜め込んでいるんです」
    "溜め込む"という言葉が、いかにも聡い幻太郎らしかった。今の自分の状態を表すのに、それ以上に的確な表現はないだろう。
    そうして頭を過る、毎朝浮かぶ疑問。

    ーーあと何回、自分は彼らに名前を呼んでもらえるだろうか。

    言い知れぬ恐怖が足元から這い上がり、ヒュウ、と知らず喉が鳴る。それを気のせいだと言い聞かせ、見て見ぬふりをして抑え込んだ。
    この感情を、知られてはいけない。覚られてなるものか。それが自分のエゴだとしても、幻太郎と帝統にだけは隠しておきたかった。
    二人が自分を生かそうと、必死で足掻いてくれているのを知っている。助けるのだと、心から信じてくれて寄り添ってくれているのを知っている。
    なのに、その陰で自分が終わりに怯えているなんて。絶対に、知られる訳にはいかない。
    「急にどうしたの~、幻太郎」
    誤魔化すように浮かべた笑顔は、引き攣っていなかっただろうか。声は、震えずに出せていたか。
    「………言いたくないのなら、無理に聞こうとは思いません。ですが貴方の隣には小生と帝統がいることを、忘れないで下さいね」
    静かに告げて幻太郎は立ち上がり、そろそろ帝統が帰って来る頃ですと入り口の方へ向かった。今度は小生が情報収集に向かいますと言う姿が、徐々に見えなくなる。
    隠れ家に選んだこの場所は、灯りに乏しく薄暗い。少し離れれば、他人の姿は溶けるように暗がりに消えてしまう。分かっていても、縋るように伸ばす手を止められなかった。
    「……乱数?」
    気付けば幻太郎の服の裾を握っていて、問うように自分の名前を呼ぶ幻太郎の声がする。そのことに、酷く安堵する自分がいた。
    こんなことで安心するなんて、重症だな。
    幻太郎に聞こえないようにポツリと自嘲気味に呟いて、パッと手を離す。
    「ごめんごめん、ちょっと幻太郎が心配になっちゃって」
    気を付けてねと、今度こそ笑顔で幻太郎を送り出した。





    「乱数、調子はどうだ!?」
    幻太郎が出て行ってから暫くして、慌ただしい様子で今度は帝統が帰って来た。本人としては出来る限り静かにしているのだろうが、それでもやはり多少は騒がしい。
    けれど、それが妙に帝統らしくて、こんな状況下では逆にありがたかった。
    「お帰り~、ボクは元気だよ!」
    「本当かぁ?無理してねーか?」
    笑顔で迎えたというのに、帝統は納得しかねるという表情でジロジロとこちらを眺め回した。以前ならすぐに信じて頷いただろうに、やはり帝統も過保護になりつつある。
    「もう~、本当だってば!」
    わざと頬を膨らませて見せれば、帝統はようやく納得したようだった。そんならいいけどよ、なんて言って、適当な場所に腰掛ける。
    「お前最近、らしくねえから」
    何かあったら遠慮しねえですぐ言えよ、俺らダチだろ。なんて、さらりと言う。
    あんまり自然に言われたせいで、一瞬反応が遅れた。大したことを何の衡いもなく告げられ、言葉が胸に詰まる。
    幻太郎といい、帝統といい、こいつらはどうしてこんな時に限って鋭いのか。特に帝統なんて、普段は鈍い方なのに。
    「うん、ありがとね!」
    頬が強張らないよう、自然な笑顔を浮かべるのに苦労した。ともすれば嗚咽で吸えなくなりそうな息を必死で吸って、精一杯元気な声を装う。
    この温もりを感じられるのはいつまでだろうかなんて、馬鹿な思考に囚われそうになる頭を振った。考えるべきは期限ではなく、願いを叶える方法だ。
    どうしたら、何をすれば、この先も幻太郎と帝統が隣に存在する未来を掴めるのか。それが叶わないならせめて、危険に身を投じる二人の安全確保をすべきだ。幻太郎と帝統が中央区に追われるような事態になったのは、処分されそうだった自分を助けたからに他ならないのだから。
    「乱数」
    思考の海に沈む自分を引き戻したのは、いつになく静かな帝統の声だった。
    「ん、どうしたの?」
    「俺はお前しか知らねえ。これまでも、これからも……ずっと、俺にとっての乱数はお前だけだ。それを忘れんなよ」
    言いてえのはそんだけ、とニカッっと笑って、帝統は立ち上がる。
    「ちょっと幻太郎迎えに行って来るわ!」
    ここから動くなよ、と言葉を残し、後ろを振り返ることなく帝統が部屋から出て行く。
    伸ばしそうになる手は、辛うじて抑えた。けれども、込み上げる嗚咽は無理だ。無様にしゃくり上げ、存在を気取られないように声量を小さくして……零れる涙が塩辛い。
    扉が完全に閉まり、帝統が戻って来ないのを確認してから小さく丸まった。
    ああ、本当に自分は重症らしい。ひとりで居ることが、こんなにも不安だなんて。

    ***

    クローン達に消されそうだったあの時、心の叫びが聞こえたかのようなタイミングで俺を助けに来てくれた、大切な仲間ーーポッセ。
    あの瞬間、どれほど嬉しかったのか、きっと二人には分からないだろう。クローンの存在を知っても尚、「乱数」と自分の名前を呼んでもらえることが、他でもない俺を「乱数」だと断言してくれたことが、どれだけ救いになったことか。"失敗作の飴村乱数"ではなく、二人の友人の"飴村乱数"だと認識されることが、俺にとってどれだけ喜びをもたらすものなのか。
    中央区に使い潰されるだけの運命だった自分を、命を張って助けようとする仲間が二人もいるのだという事実。それが、これ以上ないというくらいの幸福と、生きる原動力を与えてくれた。
    ともすれば自暴自棄になりそうな自分を繋ぎ止め、未来への希望まで持つことが出来たのは、幻太郎と帝統が寄り添ってくれたからだ。
    それほどの存在を喪うことなんて、堪えられるはずもない。二人が自分を生かしたいと思うように、自分だって二人を生かしたいと思うのは当然だった。それこそ、己の持てる全てを賭けて。
    むざむざ死ぬくらいなら、いっそーーそう、何度思ったか知れない。
    それでも。

    『貴方を必ず守ってみせます』

    『そんなんで助かるなら、何度だって言ってやるーー乱数はぜってえ助かる!』

    その度に、幻太郎が、帝統が、自分を生かす。ここで終わるにはまだ早いと、俺の背を支え、先へ先へと誘う。
    折れそうになる心を、二人の言葉が包み込む。
    それなら……俺のーーボクの取るべき行動は、決まってるよね?

    『馬鹿野郎!何で戻って来やがったんだ!』
    『今からでも遅くない、逃げろ!』

    二人の必死の叫び声が、耳朶を打つ。
    だから、心の限り、想いを叫んだ。

    「嫌だ!どうせくたばるなら、お前らと一緒に戦ってくたばりたい!」








    "あと何回、自分は彼らに名前を呼んでもらえるだろうか"
    ーー馬鹿だな、乱数。んなこと悩んでたのかよ。
    ーーええ、本当に。いいですか乱数。そんなの、答えは決まっています。

    ーー何度だって呼びますよ。
    ーーお前が嫌になるくらい呼んでやるぜ。


    ボクたち、三人で最高最強のポッセだよ。
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    hu_u_ko_tu

    MOURNINGRtFやブラジャニ聴くと泣けてきて、気持ちの整理する為に書いたポの妄想。🍭がブラジャニの心境に至るまでの話。きっと色々な葛藤があったんだろうなと思って書きました。「乱数!」
    「乱数」
    鼓膜を震わせるのは、すっかり聞き慣れた声。好き勝手に呼ばれる自分の名前を聞くのが、俺は結構好きだ。何故なら、俺の名前を呼ぶ瞬間だけは、二人の時間を手に入れることが出来る。秘密の共有は出来なくても、そこに宿った感情によって、俺たち三人は仲間なのだと確認できる。
    幻太郎の声は陽だまりのような温もりを含んでいて、伸びやかで優しい。帝統の声は萌え出づる新芽のようで、生命力に溢れたしなやかさを持っている。
    それを聴く度に胸の奥がキュッと締め付けられるようになったのは、いつからだったろう。

    ーーあと何回、自分は彼らに名前を呼んでもらえるだろうか。

    毎朝目覚めると、心に浮かぶ疑問。
    二人に言えば怒られるのは分かっているから、口にしたことはない。けれど、絶えず降り積もるのは、澱のような想い。
    飴のストックはある。今のところ中央区からも逃げ延びている。
    だがそれは、永遠ではない。
    いつまで続ければ、どこまで行けば。
    噛みしめた唇からは、ここ最近ですっかり慣れてしまった血の味がした。


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    「乱数、どこか具合でも悪いですか?」
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