トレンディカイ晶 これは平凡な私に訪れた、彼にまつわるめくるめくハッピーのお話。多分、きっと。
「急げ、晶!」
「待って早いですカイン!」
春。桜咲き誇る川沿いの並木道。
平日にも関わらず賑わう有名花見スポットを楽しむでもなく、二人は足早に歩いている。各々、両手にはマチのある大きな紙袋。中身はこれから商談提案に使う、自社製品のブックだ。
視界の端で晶が肩で息をしながら一瞬立ち止まったのを見て、カインが戻ってきた。
「一個持つよ」
「あ、ありがとうございます。さすがエース、優しいですね」
白いスーツの肩にくい込む書類が詰まったショルダーバッグを直すと、スーツ姿のカインの隣に並んだ。
「おだてても何も出ないぞ」
「わかってますよ!」
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