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    @BanriSuzu
    BMB用隔離アカウント。成人腐。ドギー総受。(世界線は全部別)
    色々書きます。

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    Webオンリーイベント『キミとじゃなければ』開催おめでとうございます。
    メイン申し込みコンビじゃないんですが、オムニバスの他コンビで登録していたルーク&ジェイスン警部の話を掲載します。国家警察エントランスで迷子の面倒をみるルークと通りすがりの警部の話です。
    ルーク・エドワード・ジェイスンの国家警察組中心本『剣と翼とプレアデス』より書き下ろし分のWeb掲載となります。

    ##BMB
    #BMB

    きっといつでも迷ってる 国家警察のエントランスは、いつでも相談を待つ人々でざわついている。真冬で暖房が効いているのも手伝い、混雑でより蒸し暑くなっている。
     この混雑こそが、国家警察が市井の人々に頼られ、信頼されている証だった。部下から混雑緩和の要望や改善案も上がってきていたが、そんなことは刑事部が時間を割くような話ではない、警務にでも任せておけばいいとデニス警視にも一蹴されていた。
     年齢も性別もさまざまな人だかりの中、ジェイスンはふと子どもの声を聞いた。対応するつもりはなかったが、聞きつけた反応を市民に見咎められていたら厄介だった。
    か細い泣き声の在処に視線を巡らせ、辿り着いたその先で眉を顰める。グレーのコートを羽織った若い警察官が、幼い少年の前に膝をついて笑顔を向けていた。
     またか。
     辟易としながら、ジェイスンはコートの後ろ姿に黙って近づいた。
    「きみ、ひとりで来たのかな? 誰かと、ここまで一緒だったのかな」
     子どもに目線を合わせ、ゆっくりと話しかけている。ひとつずつ家族の情報を引き出す手際はスムーズで、同時に思いやりと優しさに溢れている。子供への対応手順は警察学校でも習うが、十分及第点と言えた。
     だが、減点だ。ジェイスンは目を細める。どうやら彼は、この混雑で家族とはぐれたらしい子どもの面倒を最後まで自分で見る気らしかった。無視して立ち去ろうかと思ったが、ため息をひとつついて踵を返す。ジェイスンは警察官のそばにわざとつかつかと靴音を立てて歩み寄った。
    「ルーク・ウィリアムズ!」
    「! は、はい!」
     気づいて振り向く前に一喝する。コートの背中がびくりと震え、振り返った先で上司の顔を見つけた翠の瞳がにわかに緊張を帯びた。
    「迷子かね。何故、職員に引き渡さない?」
    「それは……」
     言いよどんだのはほんの一瞬で、ルークは意を決したように続けた。
    「窓口の方たちの手が空いていないので、自分が対応すべきと思いました」
    「彼らはそれが仕事だ」
    「もちろん、判っております。しかし電話もひっきりなしで、各課への取り次ぎも間に合っておらず、窓口の順番待ちの番号も増える一方で……」
    「それは受付が無能なだけだ。受付のアシスタントをするのがお前の仕事か?」
    「……い、え……」
     正論を認めたくないのだろう、ルークが言い淀んだ。ちょうど通りかかった案内係に子どもを預け、ジェイスンは上階の刑事部オフィスへ戻る。まだ子供を気にしているようだったが、声をかけてきた上司を放って残っているわけにもいかず、ルークも自ずとついてくる形になる。
     オフィスへの通路に二人分の足音が響く中、何か言いたそうにジェイスンの様子を窺っていたルークが、やがて決心したように口を開いた。
    「あの……ジェイスン警部。少々、お伺いしたいことがあるのですが」
    「何かね、ルーク・ウィリアムズ」
    「個人的にお聞きしたいことなのですが……よろしい、でしょうか」
    「許可すると言っている」
     あっさり許されたことを信じがたいのか、ルークは何度もしどろもどろに尋ねてくる。
    「続けないなら、話は終わりだが」
    「い、いえ!」
     背筋をまっすぐに伸ばし、それからルークはおずおずと話し始めた。
    「十三年ほど、昔の話です。子供の頃、勤務中の父……エドワード・ウィリアムズに会いたくて、父に黙って、ひとりでここに来てしまったことがありました。その時に、迷子同然になっていた子供の僕の面倒を見てくださった方がいらしたんです。……その方は、僕をわざわざ父のところに連れていってくださったり、途中でジュースを買ってくださったり、とても親切にして下さいました」
    「……」
    「初めて飲んだ味で、甘くて冷たくて、美味しかったことをとてもよく覚えていて……それ以来、そのジュースを見るたびそのことを思い出します。もう、パッケージもリニューアルされてしまいましたけど……」
    「随分とつまらん昔話をするものだな。それが何だと言うのだ?」
    「ジェイスン警部は、刑事部一本でずっといらしているとお聞きしました。警部ならもしかしたら、その方がどなたかお判りなのではないかと──」
    「その警察官が」
     ジェイスンがルークの言葉を遮った。
    「当時、刑事部に在籍していたとは限らない。国家警察官が何人いると思っている。何より、だ。今更そんなことを知ってどうする?」
    「! それは……その」
     ルークが言葉に詰まった。ジェイスンが冷めた瞳でルークを見る。
     所詮、父の思い出に紐付いた相手に会いたい、というだけだったのだ。ほんの少しでも、あの男の影を取りこぼさないように。
    「あの時僕は小さくて、ちゃんと言えなかったお礼をお伝えできればと……」
    「取ってつけたようだな。ルーク・ウィリアムズ。今一度尋ねる。君の仕事は何かね」
    「それはもちろん、人々が笑顔で暮らせるよう、困っている人を助けることです」
    「違うな」
     ジェイスンはルークの答えを一蹴した。
    「そんなのは地方警察の仕事だ。我々国家警察は、誇りある国家、リカルド共和国の権威を守るのが仕事だ。国の中枢を支える人材がつつがなく職責を全う出来るよう、その脅威となるものを速やかに排除することだ。そのために、一分一秒の時間も惜しい」
     ジェイスンは話を断ち切った。
    「そんな思い出話など忘れろ。時間の無駄だ。私は別件を思い出したから、そのままオフィスに戻っていろ」
    「……はい」
     ルークは頷いたが、微塵も納得していないのがよく判る。顔中に、悔しさがありありと浮かんでいる。こういう感情を隠せないところは、父親と違うなと感じた。まだ若いということだった。
     刑事部に来た彼は父親と同じように愚かしく、ささやかでくだらない事件に時間を割くことに注力していた。だが彼は、父に比べて平凡だった。今ならまだ、あの男と同じ轍を踏まないよう生きていけるだろう。
     落胆を隠すことも出来ないグレーのコートが、刑事部のオフィスに戻っていくのが見える。父親に似ているのに、似ていない。これみよがしに形見のコートを身に着けていても、あの男と同じには見えない。
     ジェイスンは舌打ちした。比べてしまうのは、成長して姿かたちが変わっても鬱陶しい記憶がいつまでも消えないからだ。
     葬儀場で泣いていた少年の姿も。
     あの日、署内で途方に暮れていた小さな姿も。
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    SPOILERWebオンリーイベント『キミとじゃなければ』開催おめでとうございます。
    メイン申し込みコンビじゃないんですが、オムニバスの他コンビで登録していたルーク&ジェイスン警部の話を掲載します。国家警察エントランスで迷子の面倒をみるルークと通りすがりの警部の話です。
    ルーク・エドワード・ジェイスンの国家警察組中心本『剣と翼とプレアデス』より書き下ろし分のWeb掲載となります。
    きっといつでも迷ってる 国家警察のエントランスは、いつでも相談を待つ人々でざわついている。真冬で暖房が効いているのも手伝い、混雑でより蒸し暑くなっている。
     この混雑こそが、国家警察が市井の人々に頼られ、信頼されている証だった。部下から混雑緩和の要望や改善案も上がってきていたが、そんなことは刑事部が時間を割くような話ではない、警務にでも任せておけばいいとデニス警視にも一蹴されていた。
     年齢も性別もさまざまな人だかりの中、ジェイスンはふと子どもの声を聞いた。対応するつもりはなかったが、聞きつけた反応を市民に見咎められていたら厄介だった。
    か細い泣き声の在処に視線を巡らせ、辿り着いたその先で眉を顰める。グレーのコートを羽織った若い警察官が、幼い少年の前に膝をついて笑顔を向けていた。
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    SPOILERWebオンリーイベント『キミとじゃなければ』開催おめでとうございます。
    メイン申し込みコンビじゃないんですが、オムニバスの他コンビで登録していたルーク&ジェイスン警部の話を掲載します。
    国家警察に採用されてから刑事課に行き先が決まるまでのジェ警部の話ですがルークは不在です。
    ルーク・エドワード・ジェイスンの国家警察組中心本『剣と翼とプレアデス』より書き下ろし分のWeb掲載となります。
    どこにも行けない「ジェイスン警部、ちょっとよろしいですかね」
     大会議室に向かう途中、廊下で呼び止められた。振り向くと、ファイルを手にして立っていたのは警務部所属の警部だった。
    「会議がある。手短に済ませて欲しい」
    「ああ、はいはい。──異動の件なんですが。実は少し、厄介な新人がいましてね。刑事部志望らしいんですが、周囲から浮いた変わり者のようで」
    「ほう?」
    「論文と面接で熱弁したらしいんです。国家警察は、市井の人々を守るヒーローたるべきだ、と」
     ヒーロー。
     久しく聞かなかった単語に、ジェイスンは眉を寄せた。書類を見ていてジェイスンの反応には気づかなかったのか、警部が書類を指先で叩きながら鼻で笑う。
    「警察学校の成績はまあ、悪くはないんですがね。洞察力や分析力、推理力も十分なレベルです。まあ、キャリア組の中じゃそこまで光るわけでもないですが……」
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    odgr

    SPOILERチェズルク版ワンドロワンライ第38回提出作品です。お題は台詞お題の「逃がしませんよ」で。
    暮らドメバレ、チェとルで某スタイリッシュな軟体動物たちでインクを塗り合うシューティングアクションで遊ぶ話です。今回はチェズルクっていうかチェ+ルというか……チェはハイ〇ラントの面白さに気づいたら大変なことになると思う。
    「やばっ」
     現実でルークが発した声に、画面の中の小さな悲鳴が重なる。
     まっすぐに飛んできた弾丸に貫かれ、携帯ゲーム機に映っていたキャラクターが弾け飛び、明るいパープルのインクがステージに四散した。
    「フフフ……。逃がしませんよ、ボス」
     リビングのテレビの画面では、楽しそうに笑うチェズレイが操るキャラクターが大型の狙撃銃を構えている。スナイパー役のチェズレイが睨みを効かせている間に、テーマパークを模したステージがチェズレイのチームカラーにどんどん塗り替えられていく。スタート地点である自陣に戻され、ルークは焦りと感嘆とを長い溜息に変えて唸った。
     夕食後、ルークがリビングで一息ついていた時、そわそわとした様子のチェズレイにゲームに誘われた。一週間ほど前にルークがチェズレイの前でやってみせたゲームをルークの不在時に練習したので、一緒にやって欲しいという。海生軟体動物と人型を自由に切り替えられるキャラクターを駆使して広大なステージ中を駆け回り、カラフルなインクを射出する様々な種類の武器を用いて、ステージのフロアをチームカラーで侵食しあい陣取り合戦をするその対戦アクションゲームを気に入ったようで、仲間たちと同時プレイが出来るように携帯ゲーム機本体とソフトまで買ってきたという気合いの入れようだった。携帯ハードの方は既にルークの自宅のWi-Fiにも接続してあり、インターネットを介した同時プレイの準備も万端だった。
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    odgr

    SPOILER2014.4.14開催、ウィリアムズ親子オンリーイベント「My Shining Blue star」での無配ペーパーでした。雨で外に出られない休みの日、父さんの身の上話したり『父さんの父さん』の話をしたりする親子の話です。実際こういうシーンがあったら、父さんは『ヒーローを目指すきっかけになった人』みたいな感じで己の父親像を語ってくれそうな気もしつつ。市民を守って殉職した警官だった、みたいな…………
    水底の日 雨樋からひっきりなしに流れ落ちる水が、排水溝に飲み込まれていく。
     あまりにも量が多すぎて溢れそうになっているのか、空気を含んだ水が排水管の上で波を立て、とぷとぷという音がしている。まるでプールに潜っている時に聞くような音に、ルークが唇を尖らせた。
    「午後だけど、全然止まないね……」
     カーテンを開けて確かめるまでもない土砂降りの音に、ルークは八つ当たりのようにソファのクッションに背中から重さを預ける。雷こそ鳴っていないが、春の空は昼前ごろからずっと厚い雨雲に覆われていて暗い。それがまた、憂鬱に拍車をかける。
    「久々の父さんの休みだったのに」
    「まあな。だが、外に行けなかったのは残念だが、こんな風に家でのんびり過ごすのもいいもんだぞ」
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