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    狭山くん

    @sunny_sayama

    腐海出身一次創作国雑食県現代日常郡死ネタ村カタルシス地区在住で年下攻の星に生まれたタイプの人間。だいたい何でも美味しく食べる文字書きです。

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    狭山くん

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    2015-07-27/リョマナツは正義

    ##PianoForte##リョマナツ

    その秘密は、秘密とすら気づかれない「オイ、ココはいつから託児所になってんだ」
    久々に昔からの仲間がやっている店に顔を出せば、カウンターには我が物顔で小さな足を揺らす姿。今はパーカーにジーンズの私服姿だが、平日の昼間はまだセーラー服に身を包む義務教育対象年齢だと言うことは俺もよく知っている。
    「リョーマ如きに言われてもねー」
    そんな憎まれ口を叩かれながら俺は足おきに足も届かずぶらぶらと揺らす少女の隣に座る。いつもの定位置だ。
    「クソガキに言われたかねぇ」
    そう言ってマスターである鷹晴さんにジントニックを注文し、ポケットから出したタバコをテーブルの上に置き、取り出しておいた一本にレジ前で拝借した店のマッチで火を付け、肺にヤニを取り込んだ。
    「まーたタバコ吸ってるー!程々にしろって言われてるくせに!」
    「その歳で酒場に出入りしてるガキに言われたかねぇよ」マッチをタバコの上に重ねて置きつつ少女と反対方向に煙を吐き出しながら、俺は口うるさい少女にそう返し、目の前に出されたジントニックに口を付ける。
    「あーあ、ハヤトなら絶対そんなこと言わないのに、私の隣にいるのは口うるさいオジサンだなんて」
    そう、彼女がこの酒場に来ているのは、彼女が大好きなバンドのリーダーが常連だという噂によるところが大きい。
    そして、彼女の両親がその酒場通いを許しているのは、オーナーやマスター、そして俺とも古い付き合いだからという事情がある。中学生にしてこの気の強さと意志を曲げない所がある少女にしてみれば、親に止められたところで気にはしないのだろうけれども。
    「オジサンとは何事だ、まだオニーサンだ、オニーサン」
    そう主張すれば、はぁ?というような視線だけを投げかけられ、その様子を見ていたらしいマスターに小さく笑われる。
    「なっちゃんから見ればリョーマだってもうオジサンだよなぁ」なんてからかいの声まで投げられる。
    そんなマスターに、「ですよねー」と笑う少女にムッとしてしまった俺は「じゃぁ、俺がナツの為にせーっかく手に入れてきたコレはいらねぇんだな?」とジーンズの尻ポケットから取り出した3枚の紙切れを彼女の前でひらひらと揺らす。「シグナルズの今度のファイナル、折角良い席取れたのに」それは彼女が大好きなバンドのライブチケットで。それを見せられた途端に「いる!いります!!リョーマお兄さま!!」なんて言い出す彼女は相変わらず調子の良い奴だ。「ったく、シューヘーとアスカにもよろしく言っとけよ」と言えば、「ハーイ」と良い子のお返事で。
    「じゃぁ、リョーマからチケットも巻き上げたし、今日は帰りまーす」
    「うん、お代はリョーマにツケておくね。気をつけて」
    「鷹晴さんありがとう!」
    マスターとナツの和気藹々とした会話を聞きながらジントニックを呷っていれば、カランというドアチャイムの音と共に、小さな後ろ姿はドアの向こうに消えていく。
     
    「それにしても、何でバレないんだろうな」
    笑いをかみ殺しながらカウンターの中で暇らしい鷹晴さんは俺にそう問いかける。「リョーマなのにね、なっちゃん憧れのハヤトさんは」と。
    そう。少女が大好きなバンドであるシグナルズとそのリーダーであるというハヤトは俺本人に他ならず、その事実を十数年もの間、あの少女は知らない。
    「アイツが俺の名前がリョーマだと思ってんのもあるんだろうけど、ナツの両親が面白がって隠してるってのもあるだろうな」
    今でこそ、ステージ上ではウィッグを使って居るために髪型がハヤトとは全く違う事になっている俺だが、ナツが生まれた頃はそのままの髪型で赤ん坊だった彼女を抱き上げている写真もあるのだが、彼女の両親である高校時代のクラスメイト達はその写真をうまい具合に隠しているのだ。何しろナツが物心つく前の話だ。そんな記憶、とっくに消えているだろう。
    「でもまぁ、そろそろドッキリでも仕込もうかと思ってたりもする」
    色々とプランは考えているが、実行をいつにしようかはまだ決めかねているのだ。二本目のタバコに火を付けながらそう言えば、鷹晴さんは悪人みたいな笑みを見せながら、「それは是非俺も見てみたい」なんて言い出すのだからタチが悪い。
    「それじゃ、鷹晴さんもまとめて驚かせれるようなネタ考えないと」

    それだけ返して、俺はタバコ片手に残りのジントニックを飲み干した。


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    ずっとやりたかった38歳リョーマのアレコレそのいち。
    (2015-07-27)
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