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    狭山くん

    @sunny_sayama

    腐海出身一次創作国雑食県現代日常郡死ネタ村カタルシス地区在住で年下攻の星に生まれたタイプの人間。だいたい何でも美味しく食べる文字書きです。

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    狭山くん

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    2016-04-17/地元プラネリニューアル記念に書いたヤツですね。

    ##笹野周辺
    ##青宇

    変わっても、変わらない場所。 とある日の朝刊一面を見て突然星が見たいと言い出した青嗣を連れやってきたのは地下鉄を乗り継いで30分もしない場所にある科学館のプラネタリウム。件の一面で記事にまでなっていた先日リニューアルオープンしたというそれは、俺からすればやっぱり懐かしい場所で、同じように懐かしさを感じていたらしい青嗣と投影時間まで常設展を見ようと見に行った展示は、所々はリニューアルされていてもやっぱり懐かしいものが多かった。プラネタリウムのドームを利用して地球と宇宙をイメージした空間を更に上の階のスペースシャトルの模型から見ることが出来る昔からの俺のお気に入りの空間に入れば、十数年以上前から変わらない景色が広がっていて、思わず口角は上がってしまう。
    「先輩ってやっぱり宇宙好きなんですか?」
     そう問われれば、まぁなぁ。と笑う。名は体を表す訳ではないけれど、小さい頃から星を見るのは好きだったし、イトコ姉弟を連れて星を見に行ったことも少なくはない。今日こうやってこの場所に来ているのも、元はと言えば俺が家庭用プラネタリウムを買って家で投影してみせたからだ。
    「でもまぁ、リツには負けるな」
     そうやって天体観測に連れていった姉弟の姉の名を出せば、青嗣は嘘だ、と顔をしかめる。一度彼女と青嗣を会わせたのだが、その時に鼻で笑われたのが宜しくなかったのか、その後のリツの塩対応が悪かったのか、青嗣はリツに苦手意識を持っている。時折彼女の名前を出すと彼は大抵苦虫を噛みつぶしたような顔をする。犬猿の仲と言っても良いが、嫌っているのは青嗣だけで、リツは全く気にもとめていない。恐らくあれは路上の石位にしか思っていない。もしくは路上で死んでたネズミをうっかり踏みそうになって避ける位の感覚か。
    「あの人にそんなロマンチックな趣味なんてあるんですか」
     そう問いかけてくる青嗣の語調も硬い。まぁ、従兄の俺から見てもリツとロマンチックという単語はかけ離れているから仕方がないとは思いつつも、そもそもお前はリツをなんだと思っているのかと突っ込みたくてたまらない。
    「ロマンチックかどうかは置いといても、リツが小学生位の頃に星見に連れていったらそこからなぁ。俺より詳しいぞ」
     天体観測行くならリツ連れてったら百人力だな。と付け加えてやれば、青嗣は更に顔をしかめ「絶対に、お断りします」と宣言した。
     そんな話をしていれば、時刻も投影時間に近付いていて。オート番組の無い丸ごと星空解説だけに費やされる回の投影を予約していた俺たちは、そろそろ行くかとスペースシャトルの窓から離れた。

    「折角ですし、売店見ていきましょうよ」
     星空を見る50分を終え、今日の目的も達成したところで帰るかとプラネタリウムを後にすれば、青嗣は出口近くにある小さな売店コーナーに目を向ける。そこには科学館のオリジナルグッツであったり、実験用具、子供向けの実験キットであったりが申し訳程度に置かれていた。デカい科学館ならもっと色々あるんだけどなぁ。と首都圏の科学館のミュージアムショップを思い浮かべつつも、良いぞ。と答えれば、子供みたいに売店へ駆けていく。その後ろを保護者よろしく着いていけば、これまた昔から変わらないポスターや、今はこんなのもあるのかと関心してしまう実験キットが置かれていて。冷やかし程度に見ていれば、懐かしさしか感じないキーホルダーに目を留める。
    「うわ、懐かしいですね。コレ、昔からありますよねー」
     それは、蓄光タイプの惑星や銀河の写真が使われた、裏面に小型の星座早見盤が付いている円形のキーホルダーだった。
    「変わらないな。俺、昔持ってたぞ?コレ」
     しかも買ったのも一度では無い。何度か買ってはいつのまにか無くしているそのキーホルダーを思わず手にとってしまう。何種類かある柄の、月の写真が使われたものだ。「買うんですか?」首を傾げ青嗣がそう問えば「折角ココまで来たしな」と足をレジに向ける。そうすれば、少しだけ思案した青嗣は同じ柄のキーホルダーを手に取り「俺も買います」と俺の後に続いた。
    「お前も買うのかよ」
     そう問えば、「お揃いですね。今度コレ持って天体観測行きましょう?」笑顔で青嗣は答える。
    「お前本当に天体観測行きたいならそれじゃ足りない。早見盤も買っておけよ」
     小型ながら割と使えるキーホルダーではあるが、初心者にはデカい方が無難だ。そう忠告すれば、素直に棚に置かれていた紙製の星座早見盤を持ってきた。その素直さが忠犬みたいで、「早見盤とキーホルダー寄越せ。買ってやる」と空いてる手をだせば、分かりやすいくらい嬉しそうな顔をして、青嗣が手に持っていたそれらを俺に渡してきた。ぶんぶん振り回される犬の尻尾が見えたような気がしたのは気のせいにしておこう。


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    私もリニューアルした地元プラネタリウム行きたい。
    (2016-04-17)
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