【つるみか】7月新刊冒頭「予後不良?」
鶴丸は、その耳慣れぬ単語を繰り返した。
それは、目の前の、白衣を着た男が先程口にした言葉だった。男と言っても実に見覚えのある風貌をした、付喪神である。白い髪、金の瞳、細身の肉体に酔狂な笑顔を張りつかせた顔。それは、自分とまったく同じ姿をした、鶴丸国永の付喪神であった。ただし、上下薄い水色の簡素な洋装の上に白衣を羽織った、妙な格好をしている。
彼は、診察医として数か月前に紹介された、政府勤務の刀である。
「診察医と言ったって、俺は別に医者じゃあない。きみみたいな不具合の出た刀の調査をするには、正常な同位体と比較するのが一番手っ取り早いからな。要は俺の仕事は不具合つきの鶴丸国永と自分のデータを比べてあれこれ難癖をつけることだ。なに、意外と、愉しいもんだぜ」
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