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    ashn__k

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    刑桐が死体を埋めに行く話

    二次創作始めてなので何もかも許されたいです

    支部に加筆修正したものをあげました🙋

    #刑桐
    paulowniaWood

    「ヒマか?」

    数年ぶりの電話にも関わらず、淡々と待ち合わせ場所を決めるアイツの声を聞いてようやく手の震えが止まった。


    人間をはねた

    いや、正確に言うと人間の方から当たってきたの方が正しい。

    ここ数ヶ月、誰かにつけられている気がしていた。昔買った恨みか、最近の仕事絡みか。心当たりは幾つかあったが、こちらから動く程でも無い。相手の出方を待てばいい。どっしりと構えていたつもりが、まさかこんなことになるとは。

    仲間が出てきて警察を呼ばれるんじゃないかと思ったがその様子も無い、俺は仕方なく肉の塊と化したそれを引きずってトランクへと押し込んだ。




    「で、ムショに世話になる前に俺に一言挨拶ってことか」

    最後に会ったときと比べて幾分か目つきが鋭くなっているものの、やっぱりアイツは変わっていなかった。メガネを指で押し上げる仕草も懐かしい。

    「ちげぇよ、処理したいんだよ」

    「死体をか?」

    流石生まれも育ちも悪いやつ、話が早い。

    「あるだろ山、こういうときの為に」

    俺の幼なじみ、兼元恋人の刑部斉士はヤクザの血筋だ。今は鬼龍会の息がかかった会社で社長をしているがゆくゆくは継ぐだろう。やましいことを処理してもらうにはうってつけだ。

    答えを出す前にアイツはタバコに火をつけた。細く息を吐き出し、夜空を見上げる。春が近づいてきたとはいえ、まだ肌寒さは残っていた。

    「……奇遇だな。俺も埋めたいものがあるんだ」

    「なんだ犬でも轢いたか」

    「いやさっき人を殺した」

    「は?」

    ここに来る前にコンビニに寄ってきた、そんなテンションで言うもんだから返す言葉がない。とても人殺しの後とは思えないケロッとした顔をしながら話を続ける。

    「最近狙われていたんだ、うちに恨みがあったらしい。まあよくある話だ。今から埋めに行くとこだから横開けてやる。コイツも1人で山の中は寂しいだろうからちょうどいい」

    後ろに停めた車に視線を送りながら、また煙を吐いた。バイクじゃなく車で来たから珍しいと思ったらそういう事か。

    一緒にこのヤバい状況を乗り越えてくれそうな奴は他にも何人か思いついた、しかし一緒に手を染めてくれそうな奴はコイツしか思い当たらなかった。音信不通の数年を飛び越えて、連絡したのはそういう訳だ。

    まさかアイツも同じくらいやましいことを抱えているとは思わなかったけど。



    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



    いくら私有地とはいえ、こんな真夜中に車2台でゾロゾロ入っていくのは怪しすぎる。俺の死体を後部座席の足元に、アイツの死体をトランクに乗せて俺たちは山を目指した。

    道中は昔話に花が咲いた。中学のこと、高校のこと、スタオケのこと、そして付き合っていた当時のこと。

    一緒にいて居心地が良いなんて言葉じゃ済まされない、俺もアイツも互いに寄り添って、上手く相手と填まるように成長してきた。離れた数年で気づいたが、今日話をして確信に変わった。


    ―なんて、まるでヨリを戻す前みたいだが今日は生憎そんな気分ではなかった。俺とアイツ、そして名も知らない2つの死体を乗せて車は山道を進んでいく。

    「ここら辺がいいだろう」

    木がまばらに生える思いっきりありふれた場所で車は止まった。ココがアイツらの墓場だ。

    「掘るぞ」

    大きなシャベルを手に持ち、ひたすらに穴を掘り進める。車中とは打って変わってずっと無言だった。軍手をしていても冬の寒さで指はかじかみ、柄が滑って手の皮が剥けた。

    「これくらいあれば充分だろ」

    1時間半ほど経ってようやく人2人が収まりそうな穴が完成した。シャベルを適当に地面に放り出して木にもたれかかる。既に全身の筋肉が悲鳴をあげていた。

    見かけによらず武闘派なアイツも流石に音を上げているだろう、そう思い横目で見たがなんてことない顔をしている。相変わらず頑丈な奴だ。

    「斉士、煙草くれ」

    「ん」

    馴染みのないフレーバーと山の冷たい空気が肺に満ちていく。視線を落とすと、ずっと見ないようにしていた死体が目に入った。

    「白んできたな、さっさと埋めるぞ」

    躊躇なく死体に近づくアイツに対し、俺はなかなか1歩が踏み出せなかった。顔なんて絶対に見たくない、いつか刑事にこの人の顔写真を見せられた時、表情に出てしまう気がして。

    俺が動けなくなっていることに気づいたのか、アイツが代わりに死体を整えてくれた。目を閉じさせ、変な方向に曲がった足を真っ直ぐに戻し、手を組ませる。

    「……よく出来んな」

    「これくらい出来なきゃ部下に示しがつかない」

    結局俺は死体が土で隠れるまで何も出来ず、木にもたれていた。死体2つと煙草の吸殻2つが斉士の手で葬られる。

    「帰るぞ」

    半分アイツに抱えられるようにして立ち上がり、どうにか助手席に乗り込む。平らな道に出るまで、対して代わり映えもしない窓の外をじっと眺めていた。ただただ胸糞が悪い、何故か罪悪感すら感じない自分に嫌気がする。アレを轢いた前と後じゃ、まるで自分が別人みたいだ。

    行きがけやたら話が弾んだのは、目の前に出来事から目を背けたかったからだと急に気がつく。

    六号線の夜叉、そんな2つ名が付いても俺は所詮ただの悪ガキにすぎなかった。隣にいる斉士みたいな、本当にケジメをつけた悪者にはなれない。

    数年前、突然関係を断ったときもそんなことを考えていたような気がする。互いに上手く填まると信じてやまないのに、時間が、環境が、俺たちを引き裂き心が離れていくことに耐えられなくて、自分から逃げた。

    今回うっかり頼ってしまったが、また俺は行方をくらますだろう。こんなことがあっては今の仕事ももう出来ない。あてはないが旅立つしかない。

    頭の中で逃げ道を探していると不意に右手を触られた。手を繋ぐわけでもなく、ただ緩く触れ合う感触。未だ強ばり冷たいままだった手に、血が通っていく気がした。人を殺そうが罪を背負おうが変わらないものがそこにある。そう言われているようだった。

    いつの間にか太陽が顔を出し、海岸線から朝日が零れ始めていた。柔らかな陽の光が目にしみる。

    温かいものが頬を辿ると、触れるだけだった指がゆっくり俺のと絡んだ。振りほどくことも出来たその手を、俺はそっと握り返した。
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    ashn__k

    DONE10年後に集まったスタオケメンバーの話(成視点、刑桐)いかにもといった感じの黒塗りの高級車が居酒屋の前に止まった。一瞬何事かと身構えるが、降りてきたのは見覚えのある懐かしい顔だった。

    「うちの晃が世話になったようだね」

    「……刑部さん!お久しぶりです。変わりませんね」

    「お前も変わらないな、成宮」


    青春を共にしたオケメンバーたちと久々に飲みに行った。あの頃のことを思い出すと今でも胸が熱くなる。メンバーを集めるために全国を巡り、色んな土地で演奏した。その思い出の一つ一つが、夜空に瞬く星々のように今も俺の胸の中で輝いている。

    『スターライトオーケストラ』

    その名に相応しい日々だった。



    「今回も楽しかったですよ」

    「それは良かった」

    こうやって今でも顔を合わせる俺たちと一線を引いた彼。正直、姿を見ることはもう無いと思っていたから今日この場に現れたのは心底意外だ。

    「……それだけ大切なんですね」

    居酒屋の看板にもたれかかるようにして座る彼の相方を見る。あの頃よりも伸びた髪の毛が顔を覆っていてよく見えないが、きっとすやすやと寝息を立てているのだろう。

    喧嘩は強いがアルコールには滅法弱いみたいだ。まあそれを分かって、自分 1201

    ashn__k

    DONE刑桐が死体を埋めに行く話

    二次創作始めてなので何もかも許されたいです

    支部に加筆修正したものをあげました🙋
    「ヒマか?」

    数年ぶりの電話にも関わらず、淡々と待ち合わせ場所を決めるアイツの声を聞いてようやく手の震えが止まった。


    人間をはねた

    いや、正確に言うと人間の方から当たってきたの方が正しい。

    ここ数ヶ月、誰かにつけられている気がしていた。昔買った恨みか、最近の仕事絡みか。心当たりは幾つかあったが、こちらから動く程でも無い。相手の出方を待てばいい。どっしりと構えていたつもりが、まさかこんなことになるとは。

    仲間が出てきて警察を呼ばれるんじゃないかと思ったがその様子も無い、俺は仕方なく肉の塊と化したそれを引きずってトランクへと押し込んだ。




    「で、ムショに世話になる前に俺に一言挨拶ってことか」

    最後に会ったときと比べて幾分か目つきが鋭くなっているものの、やっぱりアイツは変わっていなかった。メガネを指で押し上げる仕草も懐かしい。

    「ちげぇよ、処理したいんだよ」

    「死体をか?」

    流石生まれも育ちも悪いやつ、話が早い。

    「あるだろ山、こういうときの為に」

    俺の幼なじみ、兼元恋人の刑部斉士はヤクザの血筋だ。今は鬼龍会の息がかかった会社で社長をしているがゆくゆくは継ぐだろ 2597

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    konatu_0722

    MOURNING日常推理モノが書きたいと頑張ったけど、面白くないのでここで供養
    「呪いって信じるか?」
     深夜午前二時。明かりを消して怪談話をするにはもってこいの時間だが、同じベッドに眠る刑部は興味の欠片もないようで欠伸をしている。桐ケ谷だって別段、怖い話をしようと考えたわけではない。ただ単に、ふと思い出しただけだ。
    「お前の口からそんな単語が出てくるなんてね。どうした、夜中のトイレに行くのが怖くなったか」
    「そんなんじゃねぇよ。ただこないだ大学の先輩に変なこと言われてさ」
     興味を持ったのか、枕に預けていた頭を腕に乗せてこちらを見てきた。
    「詳しく話してみろ」

     まだサブスクにも上がっていない話題の映画があった。興行収入何百億だかで、大学でも見に行ったと話題で持ちきりだった。あいにく桐ケ谷は見てなかったが、同じ学部の先輩が興味あるならDVDを貸してくれると言う。その先輩は二年に上がってから同じキャンパスで通う内に仲良くなり、来年は大学院に進むらしい。スタオケの練習と授業の兼ね合いが難しく、提出物に困っていると声をかけてくれたり、過去テストの情報をくれたりと工業部では珍しい部類の穏やかで気配りができる人で世話になっている。そんな先輩から、興味があるならと借りることができた。家に帰り早速観ようとパッケージを開けると、中は何の印字もされていないDVDが一枚。普通はタイトルが印刷されているのにおかしいなと思いつつデッキに入れようとしたところで、その先輩から電話がかかってきた。
    2883

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    ashn__k

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    「……刑部さん!お久しぶりです。変わりませんね」

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    その名に相応しい日々だった。



    「今回も楽しかったですよ」

    「それは良かった」

    こうやって今でも顔を合わせる俺たちと一線を引いた彼。正直、姿を見ることはもう無いと思っていたから今日この場に現れたのは心底意外だ。

    「……それだけ大切なんですね」

    居酒屋の看板にもたれかかるようにして座る彼の相方を見る。あの頃よりも伸びた髪の毛が顔を覆っていてよく見えないが、きっとすやすやと寝息を立てているのだろう。

    喧嘩は強いがアルコールには滅法弱いみたいだ。まあそれを分かって、自分 1201