「モクマ」
「………なんだ、フウガ」
胡座をかいたまま大樹に背を預けていたモクマは突然現れたフウガに特段驚いた様子を見せず、チラリと見上げる。
里の長であるフウガにとって不遜な態度であったが、それどころではなかった。
「膝を貸せ」
「膝ぁ?」
フウガは憮然とした表情を浮かべたまま、胡座をかいていたモクマの膝を蹴る。
「痛っ」
言葉ではない行動の抗議に押され、モクマは胡座を崩す。フウガは地面に手をつき腰を下ろすと、伸びたモクマの膝の上に、当然のように頭を乗せる。
突然の重みに抗議の声をあげかけたモクマだったが、閉口する。
フウガの様子に異変を感じた。
「……何かあったのか?」
モクマは真横を向いてしまったフウガの前髪に恐る恐る指を伸ばす。
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