ほんの仕返しのつもりだった。
先日着用するようにねだられたバニー服。
あんなものを用意する桐ケ谷の気が知れないし、刑部に着せようとするのも理解し難い。
結局着ずに突き返したので、どうなったのかは知らない。ただ、やられっぱなしは面白くない。
どうせなら桐ケ谷も驚くような仕返しをしてやろうと、似たような服を用意した。
見た瞬間顔を顰める桐ケ谷を見られれば溜飲は下がったのに、どうしてこうなったのだろう。
「どうよ」
我が姿を見ろとばかりに仁王立ちしている桐ケ谷を視界に入れて、刑部は絶句した。
所謂逆バニー服と呼ばれるそれは、長い手足を黒く光沢のある布で纏ってはいるが、大事な部分が隠せていない。辛うじて尻は覆われているが、背中と、なにより鎖骨から股下まで全開となっている。
桐ケ谷の普段隠れている肌が露わになって、胸の薄らした谷間も適度に割れた腹筋もくびれた腰も、一切隠されていない。
唯一、小さな三角形の布が胸の頂と股間を隠しているぐらいだ。それすらも、緩い紐で括られているので心許ない。
目を丸くしたまま言葉のない刑部が面白くないのか、目を眇めた桐ケ谷が近づいてきて顔を掴んで上げる。頭に着けてあるウサギ耳が、嗤うように見下ろしてくる。
「んだよ、お前が着ろっつったんだろ?」
「そうだが、まさか本当に着る奴がいるか」
二の句が告げない様子を見て、桐ケ谷は何かに気づいたようで口をにんまりと歪ませる。
「着たら以外と面白いぜ。それにほら、こないだ剃ったばっかだから、ここも…キレイだ」
そう言って臍から下、股下に向けて手でなぞる素振りを見て、思わず刑部の喉が鳴った。
「ははっ!正直だな。…よっと」
座っている刑部の膝を跨いで、足の上に腰を下ろしてくる。バランスを取るために肩に手を置いてくるので、思わず腰を掴むが指が腰骨を引っ掻き、桐ケ谷が甘い息を吐いた。
「……晃、」
「なぁ、これからイイコト、しようぜ」
顔をぐっと近づけて内緒話のように提案される。ついでに股間もぐっと合わさり、息が弾む。
悪戯好きなウサギの誘いは、甘い音に満ちていた。