あんたが、俺の審神者か?「主は御手杵は平気なのですね。」
その日、たまには土いじりでもするかぁーっと畑仕事の手伝いの休憩中に蜻蛉切に言われた。今日の畑担当は蜻蛉切と桑名江だ。
蜻蛉切さんは、私の苦手なイケメン要素少々あってマッチョも苦手だが彼の誠実で、時々見せるおちゃめな所や面倒見のいい所(オカン気質)もあったりで、不快感なく接している。桑名江はご覧とおりに顔が見えないので問題は無い。ただ、他は、うん、ちょっと困っているが。
台所の付喪神さまたちが用意した、つめたーい麦茶で喉を潤す。
「いや、ギネさんはどこにでも居そうな感じの人じゃん?」
我ながら酷い事を言ってる所はある。
その言葉に蜻蛉切と桑名が微妙な顔をする。
いや、審神者たちの中でもギネさんはクラスに一人はいるいいヤツ普通な奴ってよくいわれてるんだって。
「まぁ、身長あるから、急に来られるとビビるけど。」
その言葉に蜻蛉切がそわそわしだす。あぁ、身長の事を気にしてるのね。それにつられて配下のような桑名もそわそわする。
「…………なんだろ、ギネさんは、審神者になる前にあったことある気がするのよね。」
私の言葉に二人な首をかしげる。
たまに、ギネの後ろ姿や稽古の姿を見てると、ぼんやりと既視感がある。
「うーん。記憶を操作されたのかもね。はっきりと覚えてないのよ。だだ、そのあと直ぐに審神者の誘いを受けたから。」
「そう、なのですか。」
「………。」
「んー、私が審神者になったのは高校2年の春頃。友達って思ってたんだけど時の政府がうまく紛れ込ませた政府管轄の乱ちゃんがいてね、審神者にならない?って勧誘された。」
私の審神者の経緯を聞くと二振りから驚きの気配。蜻蛉切は「はい?」っと目を丸くして、桑名は表情がわからないが口をぽかーん開けている。
「知っての通り、本丸からなら大学への通学が転移で出来て楽。あと大家族で育ってるから、一人でゆっくりする所が欲しくてね。本丸は受験勉強するのに、すごいちょうどいい環境だったしねー。」
高校生活と受験勉強のかたわらに審神者業界と大変だったが、本丸では家にいると誰かしらいる所から確実に一人になれる所にいれるので、かなり助かった。
デメリットとして、常に死と隣り合わせだが、それと引き換えでも、私にとって審神者というのは生きていく中で必要だった。
二人共「主がそれでいいのなら」とご納得出来ない言葉をこぼす。それもそうよね。
「それより、今は、ギネの話よね。既視感はなんでなんだろうねー。」
なんでだろうなぁーっと、上を向く。
今日は天高く青い空。太陽の位置がそろそろお昼にぐらいだろうか…。
「そんなの、あんたが時間遡行軍に襲われて、ギネが助けたとかだろ?」
「………おや、たぬさん」
「その名前のよび方やめろ」
意外な人物の登場に、さすがの私もびっくりする。イケメンは苦手だが強面の同田貫はわりと平気だったする。
「その線ならありうるかもね。」
「だとしても、主はまだ、審神者じゃないはずでは?」
ですよね。そりゃ、うちの本丸に一番できた槍はギネさんだ。付き合いも長い。そのどこにでもいそうな気さくな雰囲気もあるので、気兼ねなくはなしている。
たまにイケメン代表の伊達組や長船、長谷部の視線が怖いが。イケメンいやだ、イケメン眩しい、まじ、コワイ。
「その事件で、主が審神者になる素質を政府は見抜いたのかもな。」
「んな、あほな。どこにそんな要素が。」
「あんたはそういう、あほな事がよく起こしそうだから、やりかねぇなぁ。」
褒めてんだか、馬鹿にしてんだが。まぁ、彼の言葉使いは嫌いじゃないからいいんだけど。
同田貫は「歌仙から差し入れだ」と、おしぼりにおにぎり。追加の麦茶を差し出された。
◆◆◆
「あぁ、それか!いつ、話しかけてくれるか、楽しみにしてたんだ!」
「はい?」
真実はわりと身近な所にあったらしい。
夕食のあと、話があります!っと御手杵を呼び出して、昼間の話を。
すると、御手杵は楽しそうに事の真相を話してくれた。
夕暮れ時の帰り道。私は時間遡行軍に襲われた。審神者の素質を持っていたかららしい。
その力がたまたま強くなったのが、数ある御手杵の鞘の一つが私の地元にあり、おそわれた場所に近かったとか。
どうやら、その鞘が触媒になったのか、一時的だが御手杵を顕現させたらしい。
正式な審神者ではないので、その場にいた彼は時間遡行軍を倒すと消えてしまった。
「え。なに。その、『問おう、貴方が私の審神者か?』みたいなのり?」
「よくわからないけど、そんな感じだな!」
「………なんで、そんなに楽しそうなの?」
普段から気さくで明るい感じの御手杵が更に明るい。なんだ、これ?
「いや、だって、他の二振りよりも俺は主と縁があったってことだろ?これほど嬉しいことはないな!」
にかっと笑うギネの態度に私は両手で顔を覆う。やめろ。あほう、そういう純粋無垢に私は弱いんだよ!可愛いなぁ、くそ!!
「あんたを助けたのは別の個体の俺だけど、鍛刀されてあんたを見たときに、その情報が頭に入ってきてさ。俺が理由であんたが審神者になったのか。って嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちで複雑だったけどな。」
「じゃぁ、なんですか?うちの本丸に日本号と蜻蛉切が中々来なかったのは、ギネのせい?」
そう。うちの本丸はその二振りがまったく来ず、配布と交換でやっとお呼び出来たのだ。
「ま、まってくれ!それは誤解だ!それは俺は何もしてない!!」
「ふーーーん」
慌てふためく槍を、私は冷めた目でみる。
「自分から審神者になったと思ったら、実際の所は付喪神に神隠しされたってことか……」
「なんだ、そりゃ?」
「…ギネさんは知らなくていい。」
彼の鞘が展示されているそばに神社がある。その神社には、とあるわらべうたの発祥の地かもしれないと言われている。
わらべうたにも、神隠しの意味があると言われている。
………人に好かれるのと、付喪神に好かれるの。どちらが良いのだろうか。
「ってことは、私の本来の初期刀はギネなの!?加州じゃないの!?」
首を傾げて、少し間を開けて、神様言う。
「そう、だな。あぁ!!そうだな!!」
それはものすごく嬉しいそうに。
まるで、昼間に見た雲ひとつない青空みたいな爽やかな笑顔。
ーーーーんな、あほな。
地元にあるギネの鞘と、あるわらべうたを絡めて、女子大学生審神者が審神者になった切っ掛け話を。
………二次創作は、ほら、ファンタジーで、なんでもありですからね。
勢いで書いてます。後悔はしてない。