お昼ごはん(遠征) 古参と新参者が交じる遠征用の第三部隊。時間も一日で戻ってこれる内容。話はお昼時のこと。
「そろそろ、お昼ごはんでもしますか!」
誰かが言った。人目を避けて薙刀、太刀、打刀が腰掛けても余裕がありそうな開けた場所。薙刀の岩融と今剣が昼餉と声を上げて、本丸を出る際に今剣に「みんなに。」と審神者から渡されたお昼ご飯を取り出す。
今日は隊長に大和守安定。最近来た大般若長光、福島光忠。大和守と岩融、今剣に関しては修行も終り極でもある古参。
「おや?」
大般若が今剣から受け取ったお昼のお包みをあげると声を上げる。そこには現代のタッパーにおかずにラップで包まれている丸いおにぎり。
「おにぎりが、丸い。いままで見たことない。今日はみっちゃん(燭台切光忠)じゃないのかい?」
初めて見る形のおにぎりに、福島光忠が首を傾げる。
その姿に古参の極、3人は微笑む。
「僕の記憶だと、おにぎりって三角のイメージが強いんだが?」
大般若の言葉と「もしかし、みっちゃんの手作りじゃない!?」と弟バカになりつつある福島光忠が騒ぐ。
その本丸の厨房は燭台切光忠、歌仙兼定、北谷菜切がメイン。あとは短刀や脇差し、打刀が手伝いに来る。けれどメイン3人は、おにぎりを丸く作ることはない。
形は違うが、みなのお腹にあうように大きさは調整されている。
「いわとおしの、まんまるおにぎりはおおきいですね!」
「あぁ、主が作ってくれたのだからな!今日はツイてるな!」
がはははと気持ちよく高らかに笑う岩融と、そばで今剣の手に収まるサイズのおにぎりが数個。
「「主が?」」
新参者が二人が驚く。
なにせ、この本丸の審神者は食にこだわりがなく、はじめの頃は一日一食しかたべない偏食家でガリガリに痩せていた。噂だと新選組の刀達がむりやり食べさせたとか。
「主さんは不器用でね。食に拘りがないけど北谷菜切さんが監修で作ってるから味は大丈夫だよ。」
古参で近侍と仲がいい大和守が語る。
おにぎりは、ホタテと三つ葉の混ぜご飯のまんまるおにぎり。
「ほんとうに、うちの主は不器用だねぇ」
「お土産に、綺麗な花でも持って帰ろうか。」
「おおっと、それはいいけど、なるべく歴史に関与しない物でたのむよ、福ちゃん」
紙袋越しでしか見たことない主。初めてきた男士はそのしきたりに驚かされる。主に会いたいきゃ紙袋を被れと。
「本当に人の子は、愛らしいねぇ」
顔がいい、イケメンというのが苦手な女審神者。だからといって無愛想でもないし、自分のトラウマに抗いながらも刀剣男士たちと接する。
「大般若さんは声がいいから、その顔で主に直接言うのはやめてね。主さん、2.3日は寝込んで清光が大変な目に合うから。」
「さすが、ご贔屓の新選組の刀。主思いで何よりだ!」
カラカラと笑う大般若長光。その姿に『あとで絶対に何かやりかす』と胡乱げな視線を大和守安定は送った。
「うん。うまい。」
「みっちゃんにはまだまだおよばないけど、わくるないね」
「ふくしまさんは、すなおに、おいしいっていったらどうですかー?」
「そうだぞ!あの主が作ることは中々ないぞ?」
新参、古参を見ながら隊長を務める大和守安定は『主、厨房に入る事自体が嫌いだからなぁ』っと、朝から厨房から北谷菜切と近侍の亀甲貞宗が寿司桶をもって主の書斎に行くのを見かけたのを思い出した。
「うん。おいしい。」