(仮)二年以上、あと十分 薄く目を開いた。カーテンから差し込む光が眩しくて顔を背ける。
朝特有の部屋の籠った空気が嫌で、早々に起き上がって窓を開けた。入り込む空気が肌を撫でて、鼻から肺を通って目が冴える。窓の外は、どこまでも突き抜けていくような青があった。
窓枠に左手で頬杖をつく。触れた左頬は、昨日恋人に打たれたところだった。いや、もう元恋人と言うべきだろう。
「ホンマに言うんやなあ。『仕事と私どっちが大事なん』って」
他人事のように呟くが、それは紛れもなく自分が言われたセリフである。自分では大事にしていたつもりだったのだが、元恋人を満足させられなかったらしい。
「いやでも、だからって浮気はないやろ……」
「寂しかったから」と泣いた元恋人。問い詰めたら逆ギレをされて、挙句の果てには頬を平手打ちされて、散々だった。捨て台詞は「別れる!」の絶叫。こっちが言いたい。
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