◆二◆ 悋気 きらきらとした街角は着飾った人々がイルミネーションや華やかな店先を眺めながらそぞろ歩いている。そんな街中とは一転、扉を潜りもぎりを抜ければ、埃くさい会場がおしゃれとは程遠い様相を呈している。それでも熱気に満ち溢れ、クリスマスソングではなく大歓声が響き渡る。
「ありがとうございましたっ」
笑い声に湧く会場に向かってマイクを挟んで並び立ち、九十度にお辞儀をして威勢よく声を揃えて挨拶をし、舞台袖に後輩がはけてきた。最近飛ぶ鳥を落とす勢いで人気も実力もうなぎ上りだ。元々見た目は上々で、寧ろそれが足を引っ張っていた感もある。顔だけのファンだってついていないよりマシだが、シャレにならない奴らも中にはいる。
「クリスマスに演芸場に来る奴なんて、もの好きだけで客なんてたいして入らないと思ってた。暇人多いんだな」
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