朝の気分 いつもより早く目が覚めてしまった。水心子正秀はまだ布団で寝息を立てている源清麿を起こさないよう楽器ケースを持って部屋を出た。3泊4日の合宿も今日で終わりを迎える。起床時間にはまだ早いから練習場には誰もいないはずだ。他人の音に邪魔されずに練習出来そうだ。水心子は靴を脱いで練習場所となっている体育館に入る。フルートの音が聞こえた。カルメンの間奏曲を吹いている。可愛く着飾ったような華のある音で誰が演奏しているのかすぐにわかった。水心子が自分の席にケースを置いたタイミングで曲が終わった。
「おはよう加州。今日は随分と早いな」
音の主はフルートを担当している加州清光だった。パートリーダーも務めていて、1年生の時からコンクールの舞台に乗っている実力者だ。
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