死よ、汝来たりなば…
… ゴォォン…
鐘の響きが、アルカードを目覚めに誘う。その音には聞き覚えがある気がした。
(礼拝堂の鐘か)
悪魔城の鐘楼には巨大な鐘がいくつも備わっている。闇の血を継ぐ身に祈る神などないが、音色に馴染みがない訳ではなかった。
だが城に鐘つきはいない。
時を刻む時計塔は別にあり、母の死を境に、あの場所にもはや祈りは必要なくなった。
残ったのはただ憎悪と恐怖だ。
ゴォン…
忌むべき故郷がまだここにあると言わんばかり、鐘の音は断続的に響いてくる。
(──これは弔鐘だ)
時を知らせる音でないのなら、誰かが葬られたのだ。
まるで墓の中から己の弔いを聞いているようで、闇から抜け出すために目を開く。
辺りの光景は一変していた。
『アルカード……』
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