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    ノスクラともクラノスともつかないやつ18
    (最終セクション)

    #吸血鬼すぐ死ぬ
    vampiresDieQuickly.
    #吸死
    Kyuushi
    #ノースディン
    northDinh
    #クラージィ
    clergy

    R-1R-1(エピローグ)

    「『ロナルドウォー戦記番外編 時を超えた客人 終わり』、と……」
     ロナルドはデータを保存し、大きく伸びをした。それからすぐにバックアップをとる。
    「お疲れさまロナルド君。バナナオムレットが冷やしてあるよ。ホイップクリームとカスタードの二色使いだ」
    「マジで? 食う!」
    「ヌー!」
     ドラルクの言葉にロナルドは疲れた顔を輝かせた。ジョンは両の前脚を挙げて喜ぶ。事務所の隅では床板が跳ね上げられ、ヒナイチも出てきた。事務所の応接テーブルを囲んで、三人と一匹のお茶の時間が始まった。
    「いつの間にモジャモジャさんからネタ使用許可を貰っていたのかね」
     ドラルクが人数分のカップに紅茶を注ぐ。
    「斧で切り落とされるんで助けて下さいって言ったらOKくれた」
    「泣き落としか!」
     ヒナイチは紅茶を一口飲んで、バナナオムレットの皿を受け取った。
    「そういえばドラルク、あれからクラージィとは連絡取れたか?」
     ヒナイチが尋ねた。ドラルクは笑って答える。
    「しばらくヒゲのもとで能力を制御する訓練を受けるそうだよ。私の可愛さも見抜けなかったロートルヒゲがモジャモジャさんからどんな能力を引き出すやら」
    「連絡ついてたんなら教えろや! それ、いつの話だよ」
     ロナルドはドラルクに拳を繰り出そうとしてやめた。ドラルクがバナナオムレットの皿を差し出している。
    「先週」
     ロナルドは皿を受け取ると、バナナオムレットを片手で掴んでかじりついた。断面にバナナと二色のクリームを見て機嫌良く微笑む。
    「ふうん、お前の師匠なんだろ、大丈夫なんじゃ……先週? やっぱ殺すわ、殺した」
    「ヌー!」
    「じゃあクラージィはずっと『氷笑卿』のところに居るのか」
     ヒナイチはドラルクが再生していく様子を見ている。
    「それについては触れたくないね……」
     ドラルクはソファの上で塵から戻り、座って足を組んだ。心底面倒くさいと言うように。
    「なんでだよ」
    「五歳児にはわからんよ」
     ロナルドはドラルクを塵にした。ドラルクは塵からゆっくりと戻っていく。
    「二人ともあまり驚かないね。モジャモジャさんの能力、君たちは心当たりがあるのかね」
    「チスイガラスのあれな……」
     ロナルドはあの巨大な鳥が現れた夜の話をドラルクに聞かせた。ヒナイチは皿をテーブルに置いて後を続けた。
    「鳥が急に落ちた原因は体温低下による昏睡だったんだ。あの場にいた多くの者が急激な寒さを感じている。気温は下がってなかったのに」
     ヒナイチは半分食べたバナナオムレットの皿にフォークを置く。
    「あのとき『氷笑卿』も驚いていたようだから、おかしいとは思っていたんだ。やっぱりクラージィのほうか」
     ヒナイチは腕組みをして唸った。
    「何か気になるのか? ヒナイチ」
    「周囲の生物を無差別に低体温症にする能力だとすると、吸対やVRCのクラージィへの評価――人間への危険度が変わるかもしれない」
    「なんだよ、それ」
     ロナルドが知る限り、クラージィは危険とはほど遠い存在だ。ヒナイチとドラルクはそれぞれ腕組みして眉間にしわを寄せた。
    「犬仮面がモジャモジャさんに興味を持つのも嫌だねえ」
    「そこはどうなるかわからないが……」
    「ヒゲがその場にいたのなら、ヒゲがやったことにしておくのはどうかね」
    「虚偽の報告になってしまうじゃないか」
     考え込む二人をよそに、ロナルドはバナナオムレットを食べ終え、おかわりに手を出す。
    「クラージィさんなら、きちんと制御できれば問題ねえだろ。あのひとが誰かに害を与えるとは思えねえよ。この街のことも気に入ってたみたいだし」
    「変態だらけの魔都をね……」
    「あの時だって、人を助けようとしてたんだから。そっちを報告書に書いとけよ。あのひとの善意と、吸対の公平さを信じるぜ。ヒナイチの報告次第だけどな」
    「うん……」
     ロナルドはおかわりのバナナオムレットを半分かじった。ぬるくなった紅茶を飲み干し、こちらもおかわりを要求する。
    「面白いねロナルド君は。退治人が吸血鬼を信じよう、なんて」
    「なんだよ」
     ロナルドは少し馬鹿にされたような気がしたが、怒るほどのことではなかった。ドラルクはにこにこしながら空いたカップに紅茶を注いだ。
    「クラージィさん、いつ戻って来るんだろ」
     ロナルドは皿の残りを食べ終えて天井を見上げる。ヒナイチが言う。
    「『氷笑卿』のところにそのまま住み着くかもしれないぞ」
    「ンー……モジャモジャさんが決めることだからね……」
     ノックの音がして、事務所のドアが開いた。三人と一匹は一斉にドアを見た。
     聞き覚えのある異国の言葉。
    「クラージィさん!」
     クラージィはピンクのTシャツを着ていた。胸に大きく『野球拳大好き』と書かれている。クラージィは母国語でドラルクに話しかけた。
    「ふむふむ、シスターの胸が……?」
     クラージィは叫んだ。
     推測するまでもなく、クラージィはシンヨコに戻って早々、この街の洗礼を受けたのだ。
    「ワー……」 
    「ちん……」
    「ヌー……」
     ドラルクはクラージィの姿を見て愉快とばかりに笑った。
    「アッハッハ! モジャモジャさん、ようこそ、新横浜へ!」

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    kidd_mmm

    TRAININGノスクラともクラノスとのつかないやつ16
    アカジャというか再会したやつ見る前の構想そのままで終わりまで書く予定なので嫌だったらゴメンね
    C-8C-8

     いくつかのドアの前を通り過ぎて、教えられた部屋に入る。壁際にクローゼットと整えられたベッド、それから正面の書き物机をはさんで、本棚、姿見。掃除の行き届いた居心地の良い部屋だ。ベッドの上には新品のパジャマまで用意されている。
     クラージィは柔らかいベッドに腰を降ろし、行儀悪く仰向けに倒れた。指で唇に触れる。まだ血と体温の味が口の中に残っている。なかなか牙の入らない肌の弾力も。
     意外なことに――いや当然なのか、その味と感触は不快なものではなかった。自分で予想していたほどの抵抗も忌避もなく、かえって困惑するほど円滑にことは済んだ。
    (いや、円滑……ではなかったな)
     ノースディンは何も言わなかったが、かなり痛かったのではないだろうか。元から青白い顔が真っ白になっていた。その場に残してきてしまったのはまずかったように思う。心配だったが、棺までついていくのはさらにまずかろうとクラージィは思った。ドラルクからは、棺のありかは吸血鬼の社会において大変繊細な話題と聞いている。
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