【司類】相談しただけなのに速攻で恋が叶った「最近の司くん、なんだか変わった?」
「オレはいつも通りだぞ」
「格好良くなったと思う」
「……それは光栄だな」
まるでおとぎ話の王子様。演出のつけがいがあるとかこれは司くんに惚れてしまう人が続出するとかそんな事ばかり浮かぶ。
周り全てをステージに変えてしまうスター性。
「類、何を悩んでいるんだ? 良ければ聞かせてほしい」
胸の奥がモヤモヤする。
「別に悩んではいないよ」
「また無自覚か」
じっと覗き込む司くんの顔に引き込まれる。いっそこのまま唇を奪ってくれたらいいのに。
愛しい。眩しい。苦しい。近い。遠い。
彼はこれから『皆のスター』になるのだから僕が独占するわけにはいかない。
「相談して解決できるものなら良かったのだけれどね」
「話すだけで楽になる事もあるぞ」
これは離してくれない顔だ。仕方ない。少しだけ話そうか。
「まあ大した事はないよ。叶わぬ恋に身を焦がしている、よくある話さ」
「そうか」
司くんの事だからもっと騒ぐと思ったのだけれど。大人になったのかな。
「叶う見込みがないのならいっそ」
「司くん?」
「オレを好きになる予定はないか」
グッときた。それはずるいよ。
「無理に答えを出せとは言わない」
決まってるんだよ。答え、最初から。
「驚いたよ」
奇跡が何でもない顔をしている。手に入らないと思っていたものが既にここにあった。
「こんなにすぐ想いが叶ってしまうとは想像もしていなかったから」
「……類!」
思い切り抱きしめてくれた。
暖かくて良い匂いがする。
「愛してるぞ! これからも共にショーをして観客を笑顔にしていこうじゃないか!」
僕は強く引き寄せられたままだ。オーバーな感情表現を叫ぶ姿に(あまり耳元で騒がれると聴覚異常を引き起こさないか少しだけ心配になる)『司くんだ』とよくよく考えれば当たり前の感想が浮かび上がる。
不安なんてあっという間に消してしまう。
「類と両想いになれたんだ、盛大に交際を公表せねば」
「流石に気が早すぎるね」
「一足先にえむと寧々にだけ伝えておくか」
「それくらいで頼むよ」
ちなみに交際を報告したら『おめでとわんだほーい!』『まだ付き合ってなかったの?』とメッセージが返ってきた。『まだ』ってそんなにわかりやすかったかな。