まちびときたれ小さな呻き声を発しながら長い腕をしなやかに反らし、彼はそのまま背中を伸ばした。
それに反応するように、男の頭に賜った燃える冠が小さく音を立てながら火の粉を散らす
衣類も髪も濡れたまま歩き出し、冷たい回廊に男の足跡を残していく
水滴は王座から左へと迷う事なく曲がっていき、バルコニーで特大の水たまりを作っていた
「ん……」
仕事場での競争で一勝を勝ち取った彼は、きまって先に帰還している競争相手が定位置のバルコニーにいない事にほんの少し動揺した…と同時に表しようのない寂しさも覚えた。
その場所の主がいないならば仕方ないと肩を下ろし、ゆっくりと定位置に肘をつくと、真横のテーブルに積み上げられた本が一冊減っている事に気が付く
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