滴る(没版)- 滴る 没版 -
ぴしゃんと水音がした。
窓の外には真夏の太陽が容赦なく、その光を地上へと降らせているのが見える。そんな外気とはかけ離れたように、腰の辺りまで水を張ったバスタブで一人、上機嫌で鼻歌など唄ってみる。
「ただいま」
「おっかえりー、降谷さん」
玄関を開ける音が聞こえて、続いてここ連日の暑さに茹っているような声が聞こえてきたので、その声の主に新一はバスルームから声を掛けた。
「今日は特に暑いよ」
言いながら足音は新一が水遊びに興じている場所へと近づいてくる。
「ただいま、新一くん」
「おかえり。降谷さん」
さも当たり前のように降谷は、からりとバスルームの引き戸を開ける。そしてさも当たり前のように新一を抱きしめて、その額に口付けた。
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