強風で窓ガラスがガタガタと揺れる部屋の中心で、サカズキは目を白黒させるしかなかった。
「んまぁ〜〜ごめんねぇ先生!あたしも手伝うから!ハイこれバケツ!」
日頃は騒音に目くじらをたてるばかりの大家も、この状況では心強く親切極まりない。ありがとうございます、と100円均一の小さなちりとりを脇に置き、サカズキは雨水をバケツで掻き出した。
数日前から今年度最大級と噂された台風が直撃したのは週末だった。命を守る行動を、という指示のもと学校でも危険物は体育館に仕舞い、連絡網とハザードマップを一枚にまとめたプリントを配布したのが記憶に新しい。金土日の部活動は中止とあって、生徒も教員も足速に帰宅した。かくいうサカズキも戸締りは校長に任せ通常より2時間早く職員室から出たし、台風需要で人で溢れたスーパーで水とインスタントを買い溜めして、帰宅後は窓に養生テープまで貼った。やるなら徹底的にと雨の予感濃い曇り空の下、ベランダの掃除もして我ながら準備バッチリじゃなと腕組みしていたのだ。
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